生態学:極端な気象事象は侵入種を利する可能性がある
Nature Ecology & Evolution
2023年11月7日
Ecology: Extreme weather events may help invasive species
極端な気象事象は、非在来種に在来種を超える優位性を与える可能性があることが、メタ解析の結果明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。
動植物の侵入種は、世界各地で在来の野生生物や生態系に問題を引き起こしている。洪水、干ばつ、嵐、熱波、寒波などの極端な気象事象は、気候変動によって頻度と深刻度を高めており、動植物にとってそれを生き抜くことは容易でない。
今回Xuan Liuらは、陸上、海洋、淡水の生息地の在来動物(1852種)と非在来動物(187種)が極端な気象事象に対して示した反応を評価する443件の研究について、メタ解析を実施した。その結果、全体として、極端な気象事象に対する反応は非在来動物よりも在来動物の個体群でネガティブな場合が多いが、反応は気象事象や生息地のタイプによって異なることが明らかになった。海生動物は、在来の軟体動物やサンゴ、イソギンチャク類が熱波の悪影響を受けるものの、非在来か在来かを問わず、全体としては極端な気象事象に影響を受けないことが示唆された。非在来の陸生動物は熱波のみ、淡水生動物は嵐のみにそれぞれ影響を受けていたが、陸上生態系の在来動物は熱波、継続的低温、干ばつに対してネガティブに反応しており、淡水生息地の在来動物は寒波を除く大多数の事象に脆弱だった。
Liuらはまた、極端な気象事象のホットスポットと非在来種の既存の存在場所を調べ、両者の複合的影響に在来種がとりわけ脆弱と考えられる地域として、北米、中南米、東アジア、東南アジア、オーストラリア南西部、ニュージーランド、北大西洋などを特定した。
doi: 10.1038/s41559-023-02235-1
注目の論文
-
9月18日
気候変動:温暖化によるサンゴ礁の緩衝機能の危機Nature
-
9月18日
古生物学:初期のドーム頭を持つ恐竜Nature
-
9月17日
気候変動:温暖化が熱帯地域の土壌からの二酸化炭素排出を増加させるNature Communications
-
9月12日
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
9月11日
惑星科学:火星の泥岩に残る特徴が古代の環境条件を解明する手がかりとなるNature
-
9月11日
惑星科学:地球近傍小惑星リュウグウの母天体には長い流体の歴史が存在するNature