惑星科学:エンセラダスのプリュームに含まれる、さらなる有機化合物
Nature Astronomy
2023年12月15日
Planetary science: Additional organic molecules in Enceladus’s plume
土星の衛星エンセラダスから放出されるガスのプリュームに、メタノールやエタン、酸素を含む分子が存在することが、カッシーニ探査機ミッションで得られたデータの再解析によって示唆された。このことを報告する論文が、Nature Astronomyに掲載される。
カッシーニ探査機は2005年に初めて、エンセラダスの南半球から宇宙空間へと放出される物質の大規模なプリュームを発見した。これらのプリュームは、エンセラダスの氷の表面にある亀裂を通じて、地表下の海に由来すると考えられている。カッシーニに搭載されたイオン・中性粒子質量計測器(INMS)で2011年と2012年のフライバイ(接近通過)の間に収集されたデータの解析から、試料中に水、二酸化炭素、メタン、アンモニア、分子状水素が存在することが明らかになった。
今回、Jonah Peterらは、INMS機器チームによって処理されたデータを再解析し、既知の質量スペクトルの大規模なライブラリーと比較した。Peterらは、統計解析技術を用いてプリュームの物質の可能性がある数十億もの組成を解析し、プリュームの最も可能性の高い組成が、既に特定されている5種類の分子と、新たに特定された炭化水素、シアン化水素(HCN)、アセチレン(C2H2)、プロピレン(C3H6)、エタン(C2H6)、そして微量のアルコール(メタノール)と分子状酸素であることを明らかにした。
Peterらは、エンセラダスの地表下に存在する、この組成的に多様な化学物質のリザーバーは、生命居住可能な環境に相応しく、微生物コミュニティーを支える可能性があると示唆している。一方で、Peterらは、これらの化合物がエンセラダスで生命を維持できるかどうかは、これらがエンセラダスの地表下の海でどれくらい希釈されているかによって大きく左右されると指摘している。
doi: 10.1038/s41550-023-02160-0
注目の論文
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications
-
11月12日
気候変動:南極の氷が人為的な温暖化が1.5℃の温暖化の限界に近づいていることを示唆しているNature Geoscience
-
11月12日
惑星科学:ボイジャー2号が天王星をフライバイしたのは太陽の異常現象の最中だったNature Astronomy
-
11月8日
気候変動:プライベート航空による二酸化炭素排出量の大幅な増加Communications Earth & Environment
-
11月7日
地球科学:インドプレートとユーラシアプレートの収束の加速を説明するNature
-
10月25日
保護:深刻な絶滅の危機に瀕するスマトラトラに対してより大きな保護が必要Scientific Reports