農業:2012年以降、養殖サケの大量死事象の頻度が上昇し規模が拡大している
Scientific Reports
2024年3月8日
Agriculture: Increasing frequency and scale of mass mortality events among farmed salmon since 2012
養殖サケの大量死事象(短期間に大量の養殖サケが死ぬ事象)が、2012年以降、ますます頻繁に発生するようになり、その規模も大きくなってきていることを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
今回、Gerald Singhらは、2021年に世界のサケの養殖生産量の92%以上を占めていた国々(ノルウェー、カナダ、英国、チリ、オーストラリア、ニュージーランド)について、2012~2022年の養殖サケの死亡個体数のデータを解析した。その結果、この期間中に8億6500万匹の養殖サケが死んでいたことが判明し、同期間を通じて、ノルウェー、カナダ、英国において死亡個体数の上位10%の大量死事象の発生頻度が上昇し、大量死事象で死亡する個体数の最大数が増加していたことが明らかになった。Singhらは、単一の大量死事象で失われる可能性のある個体数の最大値を、ノルウェーで514万匹、カナダで505万匹、英国で100万匹超と推定し、大量死事象による年間養殖生産量の減少については、チリで最大819万匹、ニュージーランドで最大439万匹、オーストラリアで最大155万匹と推定している。
Singhらは、サケの養殖生産量の増加を目的とした技術と生産方法の採用と気候変動による海洋環境の変動性の増加によって、養殖サケの大量死事象の頻度上昇と規模拡大が加速する可能性があると推測している。そのような技術の例としては、人工知能とカメラを用いてサケを監視して病気の大流行を検知することや、沖合や自然条件の厳しい場所でのサケの養殖などがある。Singhらは、新たな技術や方法はサケ養殖のリスクを低減することを意図しているが、大量死事象の一因となり得るハザードに今より多くのサケをさらす可能性のある環境での養殖事業を正当化する可能性もあると指摘している。Singhらは、大量死事象が、大量の養殖サケを死に追いやるだけでなく、サケ養殖産業とそれに依存する地域社会にも悪影響を及ぼす可能性があると警告している。
doi: 10.1038/s41598-024-54033-9
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