考古学:オーストラリアの洞窟に残る1万2000年前の儀式の痕跡
Nature Human Behaviour
2024年7月2日
Archaeology: Australian cave holds signs of 12,000-year-old ritual
1万~1万2000年前のオーストラリア南東部の炉床に保存された、文化として伝わる最古の儀式のものである可能性のある証拠について報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。
文字を持たない社会において、民族学的に知られている文化的慣習の考古学的材料が長期にわたって保存されることはまれであり、古代の儀式の歴史的記録は、世代を超えて伝えられていく間に変化していった可能性がある。19世紀のオーストラリアの民族誌の記録によれば、先住民族グナイ・クルナイの儀式として、犠牲者となる人の所有物を、油脂を塗り付けたモクマオウの木の棒に取り付けて火の前に置き、棒が倒れるまで待つことで、病気を治したり害をもたらしたりするという慣習があったという。
今回、Bruno Davidらは、その地域の先住民の人々と共に、オーストラリア南東部のグナイ・クルナイ族の土地にあるクロッグス洞窟で儀式が行われた証拠を得た。発見された2つの小型の炉床にはそれぞれ、1万~1万2000年前のものとされるモクマオウの木でできた棒が1本置かれていた。これらの棒の残留物分析からは脂質の存在が確認されたが、この炉床が調理や暖を取るために用いられていたことを示す証拠は見つからなかった。
得られた証拠から、Davidらは、この洞窟が1万~1万2000年前に儀式目的で使用されていたのではないかと示唆している。これは、19世紀に民族誌学者によって記された儀式とも一致する。Davidらは、同様の儀式はグナイ・クルナイ族コミュニティーにおいて、最終氷期末期以降、約500世代にわたって絶えることなく行われてきた可能性があると述べている。
doi: 10.1038/s41562-024-01912-w
注目の論文
-
4月23日
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
4月22日
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change
-
4月11日
環境:世界のプラスチックのうち、再生材料から製造されたものは10%未満Communications Earth & Environment
-
4月10日
考古学:狩猟採集民がマルタに向けて出帆Nature
-
4月10日
惑星科学:月の裏側の水の存在量の評価Nature
-
4月9日
遺伝学:古代のDNAから湖魚の早期導入が明らかにNature Communications