気候変動:近北極圏における火災活動の要因を探る
Nature Geoscience
2024年9月3日
Climate change: Exploring drivers of fire activity in the near-Arctic
北極域と亜寒帯地域(Arctic–boreal region)における山火事の気候変動に対する感受性は、人間および環境の影響により、地理的に異なる可能性があることを報告する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。この調査結果は、このエリアには異なる火災の挙動を示す7つの地域が存在し、それぞれが異なる要因によって引き起こされている可能性を示している。
近北極圏およびその周辺の亜寒帯地域における山火事の発生率は増加しており、気候や人間の健康に影響を及ぼす可能性もある。カナダやシベリアの一部など、一部の地域では近年、規模や激しさが極めて大きな山火事が発生しており、これは気候温暖化が原因であると考えられている。一方で、他の地域ではこのような火災活動の変化は見られていない。火災の特徴に関する包括的なデータセットが存在しないため、空間的に異なる山火事の発生状況がなぜ、どのように変化するのかを理解することは困難であった。
Rebecca Scholtenらは、衛星観測により、2012年から2023年にかけて北極圏と亜寒帯極地周辺の領域で発生したすべての火災を12時間間隔で追跡した。これらのデータを使用して、著者らはすべての山火事と発火時間、場所、規模、継続時間、拡大、強度などの特徴をまとめたデータベースを作成した。著者らは、異なる人間および環境の影響によって主に駆動される、7つの異なる火災パターンを特定の地域で確認した。また、北米の亜寒帯地域、東シベリア、および北方のツンドラ地域では、火災活動が気候に対して最も敏感であることを発見した。一方、南シベリアおよび北欧の火災は、気候変動による熱波や干ばつの増加の影響をあまり受けない可能性があり、その主な理由は、燃料の減少や火災の抑制などの人為的要因によるものである。
著者らは、この発見が火災活動の将来予測の改善と、異常気象のリスクがある地域の特定につながる可能性があると示唆している。また、このアプローチは他の地域の山火事にも適用できるかもしれないと指摘している。
Scholten, R.C., Veraverbeke, S., Chen, Y. et al. Spatial variability in Arctic–boreal fire regimes influenced by environmental and human factors. Nat. Geosci. (2024). https://doi.org/10.1038/s41561-024-01505-2
doi: 10.1038/s41561-024-01505-2
注目の論文
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
11月20日
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications
-
11月19日
気候変動:パリ協定を達成するために、CO2の受動的吸収を計算から分離するNature
-
11月18日
惑星科学:嫦娥6号のサンプルが裏側の月火山活動の年代を特定Nature
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications