ゲノミクス:ラパ・ヌイの人口の歴史を再評価する
Nature
2024年9月12日
Genomics: Reassessing the population history of Rapa Nui
ラパ・ヌイの古代住民の衰退は、自滅的な人口崩壊によるものではない可能性が高いと示唆する論文が、Natureに掲載される。これにより、「生態学的自殺」という物議を醸した説は否定された。この発見は、島の人口の歴史に新たな光を当てる。
ラパ・ヌイ(旧名イースター島)は、世界でも最も人里離れた居住地のひとつであり、南米から西に約3700 km、最も近い有人島から東に1900 km以上離れている。この島の人口動態の歴史における2つの重要な特徴が争点となっている。1つは、17世紀に現地の資源を過剰に利用した結果、ラパ・ヌイの人口が崩壊したのか(1860年代にペルー人の奴隷狩りの一隊が到着し、1722年にヨーロッパ人が到着する前)。もう1つは、ラパ・ヌイの住民とネイティブ・アメリカンとの間に太平洋を越えた交流があったのかどうか、という点である。
J. Victor Moreno-Mayarと Anna-Sapfo Malaspinasらは、現在のラパ・ヌイ族のコミュニティーと緊密に協力し、過去500年間にわたって島に住んでいた15人の古代住民のゲノムを研究した。著者らは、17世紀の崩壊に相当する遺伝的ボトルネックの証拠を見つけることはできなかった。その代わり、著者らの分析では、1860年代にペルー人による奴隷狩りによって島の人口の3分の1が強制的に連れ去られるまで、島には小規模な人口が安定して増加していたことが示唆されている。
さらに、分析結果によると、古代の島民は、現在のラパ・ヌイ人と同様に、ネイティブ・アメリカンのDNAを含んでいることが示されている。著者らは、この混血は、西暦1250年から1430年の間に起こった可能性が高いと推定している。考古学的証拠や口頭伝承とあわせて考えると、この発見は、ヨーロッパ人がラパ・ヌイに到着するはるか以前、また、コロンブスがアメリカ大陸に到着するはるか以前から、ポリネシア人が太平洋を渡っていた可能性を示唆している。
これらのゲノムデータは、失われた先祖の遺骨の一部を特定し、返還するのに役立てられる。この論文は、過去の人口における回復力だけでなく、研究における感受性についても物語っている。
Moreno-Mayar, J.V., Sousa da Mota, B., Higham, T. et al. Ancient Rapanui genomes reveal resilience and pre-European contact with the Americas. Nature 633, 389–397 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07881-4
doi: 10.1038/s41586-024-07881-4
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