オーストラリア初のネイチャー・パートナー・ジャーナル“npj Quantum Information”の創刊をオーストラリア連邦教育相が発表
2014年11月3日
情報処理と情報伝達を根本的に変えることが期待され、急速な発展を続ける量子研究分野に特化した新しい科学ジャーナルがニューサウスウェールズ大学(UNSW)で創刊されたことを、本日、Christopher Pyne連邦教育相が発表しました。
npj Quantum Information は、国際的なオープンアクセスジャーナルであり、初めてのオーストラリアを拠点とするネイチャー・パートナー・ジャーナル(npj)です。
名誉ある編集長(Editor-in-Chief)には、UNSWに設置されたオーストラリア研究会議(ARC)量子計算・通信技術センター・オブ・エクセレンスのディレクターで、UNSW教授のMichelle Simmonsが就任しました。
npj Quantum Information は、量子計算、量子通信、量子情報理論の最前線での研究を集大成し、光学、原子物理学、半導体物理学、超伝導物理学、計算機科学などのテーマを扱います。近年、計測機器が進歩して、最も小さなスケール、つまり、物質の一分子や光の一光子のレベルで、物質を操作できるようになりました。こうした分野での研究成果により、計算能力が劇的に向上し、絶対的に安全な情報伝達が可能になる、と科学者が予測しています。
Simmons教授は、次のように話しています。「21世紀は量子情報の世紀になります。量子物理学のさまざまな特性を利用して、情報伝達と情報処理のための強力で斬新、かつ安全な技術が開発されるようになるのです。こうした分野の技術の発見、特許取得、利用ができる国家には、新たな商機と知的財産権獲得のチャンスが生まれています」。
また、Simmons教授は、科学ジャーナルにとってのオープンアクセスモデルの重要性も強調しています。「新発見は、さまざまな分野で起こっていますが、研究の進展を報じる論文の発表は、一部のジャーナルに偏っています。npj Quantum Information は、こうした状況を変え、急速に発展する量子物理学のすべての分野にとって、オープンアクセス出版の本拠地となることを目指しています」。
UNSWに設置されたARCセンター・オブ・エクセレンスの研究室を見学したChristopher Pyne連邦教育相は、次のように語っています。「ARCは、国際的な研究活動において重要な役割を果たしています。量子コンピューターの開発競争は、20世紀の宇宙開発競争に匹敵する大競争となる可能性があります」。
「オーストラリアは、国際レベルの優れた研究を行っていることで定評があります。ARC量子計算・通信技術センター・オブ・エクセレンスは、この評価をさらに高めており、npj Quantum Information が、活気にあふれ、急速に変化する量子物理学に特化し、重要な役割を果たしていくものと考えています」。
一方、マクミラン・サイエンス・アンド・エデュケーション(オーストラリア・ニュージーランド)のマネージングディレクターのDr. David Swinbanksは、次のように話しています。「npj Quantum Information の創刊には、特に胸の高鳴りを覚えます。オーストラリアの研究機関との提携によって創刊された初めてのパートナージャーナルだからです」。
「npj Quantum Information に掲載される論文は、すべてオープンアクセスとなり、その出版当初から読者に無料公開されます。オープンアクセスモデルは、研究が急展開する一方で、研究成果を報告する論文が断片的に発表されてきた量子情報の分野にとって特に重要です。私どもは、オープンアクセスによって、量子情報の研究コミュニティーでの発想の共有が促進され、この分野で続々と誕生する新興の起業家的ビジネスへの知識伝達も進むと考えています」。
npj Quantum Information では、投稿論文の受け付けを開始しました。Simmons教授は、基礎研究と応用研究の両方の論文が同誌に掲載されることを想定しています。例えば、量子力学と量子情報の基本的関係に関する論文、量子コンピューターを実現するための実際的手段、量子情報処理の新たな経路を開くアルゴリズム、極めて高感度の量子センサー、グローバルなスケールでの安全な量子通信の開発、量子エンタングルメントの新たな応用(例えば、テレポーテーション)などです。
Simmons教授は、量子計算の分野における世界的なリーダーで、UNSWからARC名誉フェローシップを授与されました。教授は、これまでにNature、Nature Nanotechnology、Nature Physics、Nature Materials、Nature Communications などの査読誌で350編以上の論文を発表しており、2012年には、教授の研究グループが、業界の予測より10年早く世界最小のトランジスターの開発という技術的成果をあげました。教授の研究室は、世界で唯一、原子レベルで精密なデバイスをシリコンで作製することができ、人間の髪の1000分の1の細さという最も細い導線も作製しました。教授は、2006以来、オーストラリア科学アカデミーの会員で、2012年にはNSWサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。また、2014年には、米国芸術科学アカデミーの会員に選出されました。
npj Quantum Information に関する詳しい情報は、www.nature.com/npjqi/でご覧になれます。
UNSW Australiaについて
UNSWは、米国のマサチューセッツ工科大学などの大学を模範として、独自の科学的、技術的、専門的な着眼点に基づいて設立されたオーストラリアで唯一の研究集約型大学です。
UNSWの活動の中核をなしているのが、イノベーション、技術と創造性です。UNSWは、卓越した成果をあげる教員と学生、そして、現実世界での研究に特化していることで定評があり、世界でトップクラスの大学の1つとなっています。UNSWは、これからも産業界や他の研究機関との密接な関係を活用して、実用性と影響力を保持する研究を続け、将来にとって極めて重要な分野での世界最高水準の研究を行う大学としての定評を高めていきます。
UNSWは、量子計算、太陽光発電、再生可能エネルギー、ナノ医療、体内埋め込み型生体材料、がん研究、HIVと感染症、国際難民法などの分野で画期的な研究成果を収めています。
以上
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