Nature Communicationsでは、透明性の高いピアレビューを本格導入
2016年11月9日
Nature Communicationsは、10カ月間の試験運用を経て、透明性の高いピアレビュー制度を恒久的に導入することを決定しました。この制度では、著者は、研究論文と一緒に査読者情報や査読コメントを公開するかどうかを選択できます。対象となるのは、2016年1月以降に投稿された全ての論文です。この制度の試験運用期間において、透明性の高いピアレビューを選択したのは、論文が掲載された著者のうち約60%でした。
透明性の高いピアレビューのねらいは、編集部が論文採用の決め手とする情報を提供して、査読プロセスをオープンにすることです。著者は、論文のアクセプトの際、査読者のレポートを合わせて公表することに同意するかどうかを尋ねられます。この制度は、出版論文に対して科学コミュニティーが行った議論の内容を知らせる機会を提供し、また、論文の詳細な評価を広く公開することで、我々が行っている査読という業務の信用が高まる可能性があります。
研究分野によって制度の受け入れ方に違いがありますが、ほとんどの分野では、査読ファイルは採択論文の過半数で公開されています。これまで採択された1200以上の論文のうち、透明性の高いピアレビューを選択した著者は約60%です。受け入れの割合については当然ながら、オープンなピアレビューが一般的な地球科学などの分野では高く、この種のピアレビューになじみがない物理科学などの分野では低くなっています。
査読者は、従来のように匿名のまま行うことも可能ですし、著者向けコメントへの署名という形で身元を明らかにすることもできます。なお著者には、この制度を利用しないという選択肢が認められていますが、査読者は全て、匿名の査読者レポートが公開される可能性があることに同意しなければなりません。透明性の高いピアレビュー制度の下で論文をレビューすることを拒んだ査読者はごく一部です。また、この取り組みが、論文の提出から出版までの平均時間に影響することはありませんでした。
Nature Communicationsのエグゼクティブエディター、Joerg Heberは次のように言います。「オープン・ピアレビューになじみが薄い方も含め、著者の試験運用への反応は、極めてポジティブなものでした。我々は、この透明性の高いピアレビューをNature Communicationsの恒久的な特徴とすることで、より多くの著者や読者が、出版論文の詳しい背景情報の価値を認めるようになることを願っています」
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