日本の科学が衰退し続ける中、小規模な大学や研究機関が輝きを放つ
2018年3月22日
Nature Indexの最新の分析から、日本からの高品質な科学成果発表が引き続き減少していることが分かりました。日本の高品質な科学成果発表は、2012年から2016年の5年間で19.6%減少したと昨年のNature Indexで発表しましたが、2016年から2017年のこの1年間でここからさらに3.7%減少したことが明らかになっています。
Nature Indexに収録されている高品質な科学論文に占める日本からの論文の割合は、2012年の9.2%から2017年の8.6%に減少しました。また、エルゼビア社のスコーパス(Scopus)データベースに収録されている自然科学分野の全論文に対する日本からの高品質論文の割合を見ても、過去10年間で2007年の7.7%から2017年の5.1%に低下しています。
この他、Nature 2018年3月22日号の特別企画冊子「Nature Index 2018 Japan」の新たな分析から、日本を代表する大規模な大学や研究機関に加えて、一部の小規模な大学や研究機関が、高品質な科学論文を効率よく発表していることが分かりました。
この特別企画冊子では、科学界のエリートとしての地位を維持しようとする日本の取り組みについて調査し、高品質な研究論文の出版という点で最も生産性の高い研究機関に着目しています。この調査は、世界の8500以上の大学や研究機関による高品質の研究を追跡しているNature Indexのデータに基づいています(データ分析方法の定義については「Nature Indexについて」の項を参照ください)。
今回、日本に関するNature Indexの分析としては初めて、大学・研究機関と企業のランキングを示すために、高品質な科学論文発表について正規化した指標を用いています。これにより、高品質な科学論文を最も効率的に発表している機関を特定することができます。この指標は、2012年から2017年までの、Nature Indexに収録されている高品質論文の1機関当たりの発表を、エルゼビア社のスコーパス(Scopus)データベースに収録されている同機関からの自然科学論文数で割ることで算出しています。
「Nature Index 2018 Japan」に収録された一覧表のトップには、世界的に定評のある大学や研究機関と並んで、総論文数に対するインパクトの高いジャーナルの論文数の割合が著しく高い大学や研究機関が含まれています。
大学について過去6年間の平均値のランキングを見ると、第1位は学習院大学で、全体的な研究発表数で世界トップクラスの東京大学は第2位でした。次いで甲南大学(3位)、京都大学(4位)、青山学院大学(5位)、大阪大学(6位)、奈良先端科学技術大学院大学(7位)、沖縄科学技術大学院大学(8位)、東京工業大学(9位)、名古屋工業大学(10位)となっています。
企業の一覧では、世界的に知名度の高い企業が10位以内にランクインしました。Nature Indexの2017年の一覧で世界全体のトップ企業であったNTTが1位、株式会社リガク(2位)、島津製作所(3位)、東芝(4位)と続きます。全体的な論文数で世界トップクラスを誇るトヨタグループは5位、次いで富士フイルム(6位)、日本電子(7位)、日立製作所(8位)、第一三共(9位)、NEC(10位)でした。
Nature Indexの創設者であるDavid Swinbanksは次のように述べています。
「今回、Nature Index 2017 Japanの分析に、データの正規化という手法を取り入れることによって、規模の異なる機関を同一水準で比較することが可能になり、これまでとは違った視点がもたらされました。高品質論文を最も効率よく発表している日本の大学、研究機関や企業が明らかになり、今までの分析では見えてくることのなかった小規模な機関を示すことができています。
国レベルで見ると、Nature Indexに収録されている高品質論文の日本からの発表はさらに減少していますが、Nature Indexの論文の絶対数では5位という順位が、この正規化した指標では4位となります。
本特別企画冊子ではまた、日本における科学の実績を向上させるための試みとともに、前進を阻む障壁についても紹介しており、研究業績を改善するための経営改革とそうした取り組みに対する文化的な抵抗、科学に従事する日本人女性研究者を増やそうとする試み、日本の若手科学者が常勤のポジションを獲得する際の障壁などについての記事が掲載されています」
Nature Indexに関する詳しい情報と国や機関の全一覧については、natureindex.comをご覧ください。
記者の方々へ:
Nature Indexについて
2014年11月に初公開されたNature Indexのデータベースは、現役科学者からなる独立したパネルが選定した、68誌の自然科学系学術ジャーナルから出版される研究論文の著者の所属機関を記録しています。
ジャーナルの選定に関しては、大規模調査によって得られた2800人超からの回答に基づいて、検証を行いました。Springer Natureによれば、これら68誌からの引用だけで、自然科学系学術ジャーナルからの引用総件数の30%近くを占めると推定されます。
直近12カ月のNature Indexデータが、natureindex.com にて、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で公開されています。これにより、世界150カ国の8500以上の機関から出され、それらの機関同士の共同研究による最新の研究成果を分析することができるのです。同ウェブサイトでは、特定の研究機関から直近12カ月間に出版された論文情報を主題別に整理された形で閲覧することができます。各機関の国際的・国内的な共同研究に関する情報も入手できます。さらに2012年まで遡って、機関別・国別の年間ランキング表も見ることができます。ウェブサイトに無料登録すれば、ユーザーは、機関別・国別の研究成果発表数の経時的な変化を表示させることができ、さらなる分析を行うために生データをエクスポートすることも可能になります。
Nature Indexでは、以下の3種類のカウント法を採用しています:
・Article count(AC)– 論文において、ある国ないし機関から1人でも著者として名前が挙げられていれば、その国ないし機関の論文1点(ACを1)として数える計算方法。その論文に著者が1人しかいなくても、100人の著者がいても、それぞれの著者の所属国(または機関)において論文1点として数えられることになるため、同じ1本の論文が、複数の国(または機関)においてACとして数えられることを意味します。
・Fractional Count(FC)– FCは、ある論文に対する各共著者の相対的貢献度を考慮に入れる方法。論文1本につき最大FCは1.0です。この1点分を、共著者全員が等しく貢献したという仮定のもと、共著者間で等しく分けます。例えば、10人の共著者がいる論文の場合、各共著者はそれぞれ0.1分のFCを割り振られることになります。
・Weighted Fractional Count(WFC) – 天文学および宇宙物理学の比重を調整するため、上記FCに対し重み付けを行う方法。これら2つの分野では、国際的学術ジャーナルで出版される全論文の約50%が、わずか4誌のジャーナルで発表されているのです。これは他の学術分野と比べると5倍も高い割合です。天文学および宇宙物理学の両分野のデータは、他の全ての分野と全く同じ方法で集計されていますが、こうした理由によってWFCでは、これら4誌の論文に、他の論文に比して5分の1の重み付けを行い、釣り合いを取っています。
Nature Researchについて
ネイチャー・リサーチは、生命科学・物理学・化学・応用科学など多岐にわたる分野で高品質のジャーナル、オンラインデータベース、研究者を対象としたサービスなど、科学界への貢献を目的としたサービスから成るポートフォリオを提供しています。
Nature(1869年創刊)は、世界をリードする、国際的な週刊科学ジャーナルです。Nature Researchは、幅広いNatureブランドの定期購読型ジャーナル、多分野を対象とするトップクラスのオープンアクセスジャーナルNature Communications、その他、Scientific Reportsなどのオープンアクセスジャーナル、学術機関や学会とのパートナーシップのもとに発行されるさまざまなネイチャー・パートナー・ジャーナルも出版しています。これらのジャーナルは、全体として、世界で最も重要な科学的発見の数々を掲載しています。
オンラインのnature.comには、1カ月当たり900万人を超えるユーザーが訪れ、Natureのニュース記事やコメント記事、そしてNaturejobsなどの科学求人サイトにアクセスしています。また、ネイチャー・リサーチは、オンラインおよび対面によるトレーニングや専門家による英文校正サービスなど、さまざまな研究者支援サービスも提供しています。
詳細についてはnature.comをご覧ください。twitter公式アカウントは@nresearchnewsです。
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詳細は、次の担当者までお問い合わせください。
田中 紗織
シュプリンガー・ネイチャー
E:Saori.Tanaka@springernature.com
※本プレスリリースの原本は英語であり、日本語は参考翻訳です。
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