Press release

Natureによる博士課程の学生向けの調査から、メンタルヘルス、ハラスメント、学生ローンの問題が浮き彫りに

2019年11月20日

博士課程に在籍する世界各国の学生6300名余りを対象とした調査の結果、大半の学生は、博士課程での研究生活に満足していることが明らかになりました。一方、研究時間や研究資金の問題、いじめなど、学生の幸福感に影響を及ぼす課題も浮き彫りになりました。

ロンドン|ニューヨーク 2019年11月13日

Natureは、博士課程の学生を対象に2年ごとの調査を実施しています。英国の教育市場調査会社Shift Learningの協力のもと行った今回の結果から、世界各国の学生が抱える課題や不安についての洞察が得られました。回答者数が過去最多となった今回で5回目となる調査では、メンタルヘルスやいじめ、ハラスメント、学生ローンに関する質問が初めて加えられています。調査への参加は、自己選択であり、全世界を対象とし、参加者の研究分野は全領域に及びます。調査は英語の他、中国語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語でも実施されました。

調査の結果から、大半(約75%)の学生が博士課程へ進学したことに満足しており、その研究生活にも概ね(71%)満足していることが分かりました。しかし、学生が感じている不安についての質問からは、将来の見通しが不透明であることやワークライフバランスの問題、研究資金が、重要な課題であることが明らかになりました。

以下が主な調査結果です。

  • 21%の学生が、いじめを受けた経験があると回答。その主な相手は指導教官や他の学生、スタッフ。 21%の学生が、博士課程において差別やハラスメントを受けたことがあると回答。
  • 36%の学生が、研究活動を原因とする不安障害や抑うつ症で相談をしたことがあると回答。
  • 27%の学生が、研究に費やす時間を週41~50時間、25%が、週51~60時間と回答。
  • 50%弱の学生が、所属大学には長時間労働の文化があると回答。
  • 約20%の学生が、博士課程での研究の他に仕事を持っていると回答。その主な理由は生計を立てるため(53%)。

調査結果の詳細な分析については、NatureのCareerセクションで3回に分けて掲載します。1回目は、調査結果の概要を紹介し、2回目は、博士課程に在籍する学生のメンタリング(指導)を取り上げ、3回目は、中国における博士課程での研究教育について考察しています。本調査の全データについては、こちらからもご覧いただけます。

シュプリンガー・ネイチャーでManaging Editorを務めるDavid Payne(デイビット・ペイン)は次のように述べています。「多くの人は、博士課程に進学すれば一生安泰と思っているようですが、現実は大きく異なります。今回のような博士課程の学生を対象とした調査により、学生が直面している課題を理解できるようになります。こうした調査は、学生のニーズを考慮する上で、研究機関にとっても大変有益なものとなります。この10年間で5回目となる今回の調査では、特にメンタルヘルスや幸福感に関する重要な質問も加えました。今回の調査結果が博士課程の学生や博士課程への進学を目指す学生のみならず、大学の教職員にとっても指針になれば幸いです」

Natureチームは、2011年から2年ごとに博士課程に在籍する学生のキャリアを調査するNature PhD Career Surveyを実施しています。Shift Learning社は、2019年の調査結果の開発、ホスティング、分析をサポートしています。調査の対象トピックが学生にとって関連があり、共感を得られるものであることを確実にするため、まず探索的な定性調査を行いました。10件のインタビューで得られた知見から、定量的調査の開発に関する情報が得られました。 今回実施された5回目の調査では、世界各国で博士課程に在籍する学生6300名余りを対象としました。地域別の回答者の内訳は次のとおりです。北・中央アメリカ:27%、ヨーロッパ:36%、アジア:28%(うち、中国:40%、インド:29%、日本:5%、韓国:5%)

その他の主な調査結果:

  • 37%の学生は、自らが育った国ではない国の博士課程に進んでいると回答。留学生は、ヨーロッパ(52%)および米国(25%)で博士号を取得する可能性が最も高い。
  • 博士課程の研究生活における全体的な満足度と強く相関していると思われる要因としては、指導者・主任研究者(PI)との関係、出版論文数、勤務時間、研究室の指導者からのガイダンス、ワークライフバランスなどが挙げられる。 56%の学生が、博士号の修了時に進むキャリアパスとして最も可能性が高いのはアカデミア(学術研究)と回答。
  • 最も人気のあるキャリアパスは、学術研究機関での研究で、産業界の研究がこれに続く。一方、研究に関連しない職業の人気が最も低かった。
  • 研究資金とワークライフバランスは、アカデミアのキャリアを追求する上で重要な障壁となっている。
  • 67%の学生は、博士号が大幅にまたは、自身のキャリアの見通しを極めて明るいものにすると回答。
  • 過半数の学生(46%)が、博士号を取得後2年以内に、パーマネント職に就くだろうと回答。
  • 3分の1の学生(33%)は、アカデミア以外のキャリアの機会について学部の人々から教わっていると回答。
  • 最初からやり直す機会を与えられる場合、学生の24%は、主任研究者(PI)を変更すると回答、8%は博士課程に進まないと回答。

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宮﨑 亜矢子
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E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。

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