シュプリンガー・ネイチャーがNature およびNature関連リサーチ誌においてゴールドオープンアクセス出版のオプションを2021年1月より提供開始
2020年11月24日
全てのNature関連リサーチ誌において、オープンアクセス(OA)出版を可能にする論文掲載料を導入するとともに、一部のネイチャー・リサーチのジャーナルにおいて、提案型(guided)OAという新たなオプションの試験的運用を開始します。
ロンドン|ハイデルベルク 2020年11月24日
シュプリンガー・ネイチャーは先月、ドイツのマックス・プランクデジタルライブラリー(MPDL)との画期的な契約*aにより、ドイツの著者が自身の一次研究をNature およびNature関連リサーチ誌にオープンアクセス(OA)で出版できるようになると発表しました。このような契約は、論文をOAに移行させるには非常に効果的ですが、複雑であり、実施に時間を要することがあります。こうしたことを受け、シュプリンガー・ネイチャーは本日、希望する著者が、Nature およびNature関連リサーチ誌においてOA出版できるオプションを発表します。
2021年1月より、Nature および32のNature関連リサーチ誌に投稿する全ての著者は、ゴールドOAでの出版が可能となります。OA出版オプションの論文掲載料(APC; article processing charge)は、MPDLとの契約と同様に9500ユーロ(約117万円)です。これにより、Nature およびNature関連リサーチ誌は、選択性の高いジャーナルの中で初めて、著者に即時OA出版のオプションを提供するジャーナルとなります。Nature およびNature関連リサーチ誌に掲載された論文は、一般的なジャーナルに掲載された論文と比較して、機関利用者によるダウンロード数は30倍以上です。また、社内の専属チームが研究論文を広く周知し、今年の政策文書で10000以上の言及を受けています。さらに、世界中で10万以上のニュース記事として報道されており、Twitterにおいて300万回以上メンションされています。
これは、OAを推進する「プランS」に参加する資金配分機関からの資金提供を受けた著者にとっても歓迎されるニュースであるとともに、シュプリンガー・ネイチャーが、所有する全てのジャーナルにおいて2021年1月までにゴールドOA出版を可能にするという公約を達成したことを意味します。
さらに、先進的な出版社であり、OA出版の先駆者でもあるシュプリンガー・ネイチャーは、2021年1月から新たなOAオプションの試験的運用を展開します。提案型(guided)OAと呼ばれる、この試験的運用では、最初は6つのジャーナル*を対象とし、著者は1回の投稿で、複数のNatureポートフォリオのタイトルの1つに出版される機会を得ることができます。これにより、時間と不確実性が減り、全ての人の効率が高まります。この試験的運用にオプトイン(同意)する著者は、編集評価料(Editorial Assessment Charge)を支払います。その後、ネイチャー・リサーチの編集者が投稿プロセスを通じて原稿を手引きし、著者に対して、外部査読を含む広範なフィードバックを編集評価報告書(Editorial Assessment Report)の形式で提供します。対象のジャーナルの1つに論文が掲載される場合は、補填論文掲載料(top-up APC)の支払いが生じますが、著者がこの提案型OA出版ルートでNature関連リサーチ誌に出版する場合の論文掲載料は、合計で約5000ユーロであり、これは、通常のルートでOA出版するコストよりも低いものです。著者は、編集評価報告書を受け取った後にオプトアウト(辞退)した場合、もしくは原稿が不採択になった場合でも、編集評価報告書を活用して他のジャーナルに投稿することができます。
また、著者はこれまでどおり、既存の従来ルートでの出版を選択することができます。このルートを通じた掲載にかかる費用は発生せず、出版された一次研究は、ジャーナルを購読している研究機関や個人が利用できます。購読コンテンツには、価値の高いNews and Views(最近発表された論文で報告された科学的進歩について、専門家が要約したもの)など、 Nature のジャーナリストおよび編集者 が作成したり、委託したりしている多くの記事が含まれます。
シュプリンガー・ネイチャーのChief Journals OfficerであるAlison Mitchell(アリソン・ミッチェル)は、次のように述べています。
「シュプリンガー・ネイチャーは、20年前からオープンアクセスへの移行を推進してきました。このため、これまでの経験を活かして、選択性の高いジャーナルで著者がOA出版できるようにするためのさまざまなオプションを用意することができました。転換契約は、OA移行のための最大の推進力であり、著者自身からの多額の追加資金を必要とすることはほとんどありませんが、転換契約は、研究機関が導入するには時間がかかるうえ、全ての組織に適しているわけではありません。このたび、OAで出版する機会を全ての著者に展開することができるようになり、提案型OAの試験的運用を通じて、著者の成功を支援するための全く新しい方法を試験できるようになったことを嬉しく思っています。
さらに、ゴールドOAという私たちの共通の目標を達成したことから、私たちは本日、これらのジャーナルタイトルを、私たちが所有する他の全てのジャーナルおよび私たちが学会と共同で発行しているジャーナルの大部分と共に、cOAlition SのJournal Tracker Tool(ジャーナル・トラッカー・ツール)に提出し、転換ジャーナルとして含まれるようにする予定です。Natureポートフォリオに明確なOAオプションが提供されたことにより、2021年には、cOAlition Sに参加する資金配分機関からの資金提供を受けた著者は、シュプリンガー・ネイチャーのゴールドOAオプションを全て把握することができるようになるはずです」
ハワード・ヒューズ医学研究所(Howard Hughes Medical Institute (HHMI);米国)のChief of Strategic InitiativesであるBodo Stern氏は、次のように述べています。
「シュプリンガー・ネイチャーが、オープンアクセスやオープンな査読に向けて緊急に必要とされている革新的な解決策を、積極的に模索していることを嬉しく思います。私たちは、提案型OAがどのように発展していくのかを興味深く思っています」
ウェルカムトラスト(Wellcome Trust;英国)のHead of Open ResearchであるRobert Kiley氏は、次のように述べています。
「cOAlition Sが推奨する転換ジャーナル(cOAlition S-endorsed Transformative Journals)への申請が示すように、Nature およびNature関連リサーチ誌の、完全なオープンアクセスへの移行が確約されたことを嬉しく思います。それと同時に、新しい出版モデルの試験的運用、論文掲載料の総額が、編集評価料と、出版が認められた場合に支払う出版料とに分割される仕組みを、興味を持って見ています。最終的には、出版社が提供するさまざまなサービスを反映させるよう出版コストを分割する必要があると考えています。そのため、Natureによる今回の試験的運用は、こうしたアプローチを周知するのに役立ちます」
*提案型OA(Guided OA)の試験的運用は、Nature Genetics、Nature Methods、Nature Physicsへの論文の投稿を対象としており、これらのジャーナルへの投稿は、Nature Communications、Communications Biology、Communications Physicsへの掲載も検討されます。
Natureポートフォリオについて
Nature およびNature関連誌の成果および出版する研究のリーチと影響に関する情報は、こちらでご覧いただけます。
Nature およびNature関連誌に関する詳細は、こちらでご覧いただけます。
Nature には、専属で120人以上が働いており、Nature関連誌を含めると360人以上がジャーナルの制作に携わっています。280人以上の編集者が一次研究のコンテンツに関わっており、193人の専任のプロフェッショナルな社内編集者(ほとんどが博士号を持つ)が、査読と改訂のプロセスを通じて著者を先導・支援し、最終原稿が可能な限り最高のものになるように協力しています。これらの編集者は、それぞれのコミュニティーと強く結びついています。2019年には、学術コミュニティーと関わり、理解を深め、透明性、完全性、適切な認識を促進する取り組みを支援するために、2000以上の会議、プレゼンテーション、研究室訪問に参加し、講演を行いました。
編集者は、60%以上の時間を出版されない原稿の評価に費やしており、掲載される論文は投稿されたうちのわずか8%であるため、出版された論文当たりのコストは、出版された論文数と出版されていない論文数によって大きく左右されます。
これらのタイトルでの出版は、著者にとっても大きな価値を提供しています。Nature およびNature関連リサーチ誌に掲載された論文は、一般的なジャーナルに掲載された論文と比較して、引用は平均で約12倍、機関利用者によるダウンロード数は約34倍です。また、Nature およびNature関連リサーチ誌に掲載された研究は、昨年の政策文書で9500件近くの言及を受けており、そのリーチの広さと影響力の大きさを示しています。
シュプリンガー・ネイチャーについて
約600の完全OAジャーナルと2200以上のジャーナルにおいてOAで出版するオプションがあるシュプリンガー・ネイチャーは、世界で最も包括的なOAポートフォリオを出版しており、世界で発行されている全ての即時OA論文の20%を占め、OAの一次研究出版最大の出版社でもあります。
用語解説
*a 転換契約:購読およびハイブリッド型からオープンアクセスで出版するモデルへ転換するために、出版社と図書館や大学コンソーシアムなどの間で結ばれる契約。
- 転換ジャーナル:ハイブリッドジャーナルおよび購読型ジャーナルを、提示された要件に準拠するよう順応させ、その主要な研究コンテンツをオープンアクセス化するジャーナル。
- オープンアクセス(OA; open access):ジャーナルや書籍などに掲載された学術研究の成果にオンライン上で全ての人が無料かつ無制限にアクセスできることを示す。
- ゴールドOA:出版社のプラットフォームにおいて、オープンアクセスで出版するルートで、出版にはAPCが発生する。ゴールドOAで出版された論文は、掲載後直ちにオープンアクセスとなり、プラットフォーム上にて無料で閲覧可能となる。
- Plan S(プランS):オープンアクセス(OA)の促進を目的とした計画。
- cOAlition S(コアリションS):欧州の研究資金配分機関が中心的となっている。国際コンソーシアム。2018年9月にプランSを策定。
- Journal Tracker Tool(ジャーナル・トラッカー・ツール):コアリションSに参加する機関から資金援助を受けている研究者が、プランSに準拠する出版物(ジャーナルまたはプラットフォーム)を特定するのを支援するツール。
参考プレスリリース
- 2020年10月20日:[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャーとドイツMPDLが、Nature を対象に含む転換契約に初めて合意
- 2020年4月8日:[プレスリリース] cOAlition Sが改定した「転換ジャーナル」基準は「非常に厳しい」が、シュプリンガー・ネイチャーは、Nature を含む大多数のジャーナルの転換ジャーナルへの移行を公約)
- 2020年8月25日:[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャーの転換契約により、国家レベルでのオープンアクセスへの移行が実現
- 2020年1月9日:[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャーとProjekt DEAL、世界最大規模の変革的オープンアクセスに関して最終契約を締結
- 2019年8月22日:[プレスリリース] Projekt DEALとシュプリンガー・ネイチャー、世界最大規模の変革的オープンアクセス契約に関する合意締結
参考リンク
- Springer Nature journals (For Librarians – portfolio)
- Springer Nature open access journals (list)
- Springer Nature hybrid journals (list)
- Nature Research journals (About Nature Research journals)
- Open access at Nature Research
- Green or Gold routes to open access
- Open research at Springer Nature(日本語サイトはこちらです)
- オープンアクセスについて
- Guided OA
シュプリンガー・ネイチャーについて
シュプリンガー・ネイチャーは、175年以上にわたり、研究コミュニティ全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、公開するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心を持つすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良サービスを提供します。 学術出版社として、シュプリンガー・ネイチャーは、シュプリンガー、ネイチャー・リサーチ、BMC、Palgrave Macmillan、Scientific Americanなどの信頼されたブランドを有しています。
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※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。