シュプリンガー・ネイチャーとカリフォルニア大学、オープンリサーチに対する論文著者の姿勢に関する理解を深める取り組みを共同で実施
2021年4月21日
オープンリサーチの原則とその利点、実施に際して想定される障壁に対する著者の意識を調査するための、新たな試験的運用
ロンドン|ニューヨーク 2021年4月15日
シュプリンガー・ネイチャーと米国のカリフォルニア大学(UC;University of California)は本日、オープンリサーチの手法(オープンアクセスの論文・データ・コード、透明性の高いピアレビュー、プレプリントを含む)に対する研究者の姿勢と意欲に関する理解を深めるための新たな取り組みを始めました。今回のパートナーシップの一環として、参加するUC所属の著者は、ネイチャー・ポートフォリオの出版誌の一部を対象とする提案型オープンアクセス(GOA;Guided Open Access)の試験的運用に参加することができます。
研究論文の最終版への即時オープンアクセスがオープンリサーチを実現する重要な要素であることを踏まえ、今回の試験的運用ではその第一歩として、UCに所属する神経科学分野の研究者を対象に、シュプリンガー・ネイチャーの提案型オープンアクセス(GOA)プロセスを利用したNature またはNature Neuroscience への研究の投稿オプションを提供します。GOAは現在、主要なネイチャー・ポートフォリオの出版誌の一部を対象とする試験的オプションとして提供されているものです。GOAの一環として、本試験的運用に参加したすべての著者は、編集評価報告書(EAR;Editorial Assessment Report)を受け取ることができます。EARの主な特徴は、研究の厳密性と再現性を高めてオープンリサーチのベストプラクティスに適合させるための、焦点を絞った詳細な推奨事項を提示していることです。
上記に基づいて、参加する著者は、シュプリンガー・ネイチャーとUCが支援する、以下のようなオープンリサーチの取り組みへの積極的な参加が奨励されます。
- 効果的なレビュー(査読)を受けるために関連リポジトリーに関連データを寄託(deposit)し、大規模データセットの共有を支援するために、必要に応じてデータ記述子(data descriptor)を公開すること(例:https://www.nature.com/sdata/policies/repositories#general)。
- 該当する場合、論文に関連するプロトコルを寄託すること。
- 再現性を高める目的で、ピアレビューと寄託のためのコードを公開すること。
- 投稿した原稿を「In Review」をはじめとするプレプリントプラットフォームにプレプリントとして公開し、早期の共有およびコミュニティーからのコメントを促すこと。ピアレビューの透明性を高めるために、EARまたはレビュワーレポートを公開すること。
今回の取り組みの過程では参加者にインタビューを実施し、上記のようなオープンリサーチを実践する動機付けとモチベーションは何なのか、また、その意欲をどのように高め、障壁をどのように低下させることができるかについて調査します。その結果は白書で公開し、オープンリサーチの方法が研究エコシステムにおいて果たし得る潜在的な役割について、初期の洞察と推奨事項を提示します。
本試験的運用は、昨年の夏にシュプリンガー・ネイチャーとUCとの間で締結した記念すべき転換契約(TA;Transformative Agreement)の一環として実施されるものです。この契約では、両当事者がオープンサイエンスコンテンツの影響と適用範囲の調査に取り組むことを約束しています。
シュプリンガー・ネイチャーのVP Editorial Nature JournalsであるRitu Dhand(リテュー・ダーンド)は、次のように述べています。「このような素晴らしい試験的運用に関してカリフォルニア大学と提携できることを嬉しく思っています。シュプリンガー・ネイチャーは、オープンリサーチを強力に支援しており、研究プロセスを可能な限りオープンにすることが科学的発見を進展させる最善の道であると理解し、これを推進することを公約として掲げています。今回の試験的運用では、著者が自身の研究のより多くの要素をオープンにした場合にどのようなことが起こるのかを調査します。重要な点は、これを研究者の観点から検討することです」
Professor of Neurology at UCSFおよびDirector of UCSF Neuroscience Graduate Program であるSamuel Pleasure氏は、次のように述べています。「オープンサイエンス、すなわち論文のみならず、データセットやコード、研究プロトコルを無料で公開し、共有するということが、科学的発見をさらに加速させるためのカギとなります。優秀な公立大学であるカリフォルニア大学に所属する私たちの多くのDNAには、そのような思考法が組み込まれています。今回の試験的運用は、研究者が自身の研究を無料でオープンに共有するモチベーションと、研究者が感じている可能性がある障壁を明らかにすることで、私たちが生み出している研究成果に対する幅広い一般の人からのアクセスの実現に向け、当大学がさらに大きく前進するための力となるでしょう」
提案型オープンアクセスについて
提案型オープンアクセス(GOA)は、先進的な新しい出版プロセスです。このプロセスでは、シュプリンガー・ネイチャー社内のネイチャー・ポートフォリオの出版誌の編集者の職務を拡大し、初回の投稿から最終的な出版にいたる出版業務のあらゆる段階を通じ、論文著者に協力的な助言を提示します。経験豊富な編集者が論文著者の原稿を評価し、厳格なピアレビュー(査読)プロセスを管理します。また、その過程のあらゆる段階を通じてガイダンスを示し、サポートを提供するとともに、著者が論文を1回投稿するだけで、論文の投稿先として適したジャーナルを論文著者と協力して見つけ出し、発表できるよう全力で取り組みます。
GOAでは一般に、論文掲載料(APC;Article Processing Charge)を2回に分割して支払う必要があります[編集評価料(Editorial Assessment Charge)と補填論文掲載料(top up APC)]。ただし、UCに所属する論文著者のうち、Nature–UCオープンサイエンストライアルによって出版する著者については、UC図書館とシュプリンガー・ネイチャーがすべての料金を補償します。したがって、著者が料金を負担することはありません。
編集評価報告書(EAR)は、1回目の外部ピアレビュー後に通知されます。その後、著者に対し、それぞれの著者に合わせて作成されたポータブルパッケージが提供されます。このパッケージは、投稿先として検討しているジャーナルへの適合性に関するガイダンス、実験の枠組みに関する詳細な評価、研究の厳密性と再現性と高めてオープンリサーチの手法に適合させる方法に関する詳細なガイダンス、ならびに査読報告書を閲覧する方法に関する当社の編集ガイダンスで構成されています。このため、著者は、推奨されたジャーナルに論文を出版する手続きをそのまま続けるか、原稿と編集評価報告書を別のジャーナルに投稿するか、いずれかを選択することができます。その目的は、著者と協力し、投稿先として最も適したジャーナルを見つけ出すことにあります。
オープンサイエンスについて
オープンサイエンスとは、研究サイクル全体にオープンネスの原則を拡大し、可能な限り早い段階で共同研究を促進し、共有することです。これは、科学と研究のあり方を体系的に変えるだけでなく、より発見しやすく、使いやすく、効果的な研究システムをサポートし、知識の発見を発展させます。
オープンサイエンスの中には、下記のものが含まれます:
- オープンアクセス:研究成果が出版時に無料でアクセスすることを可能にするための一連の原則と実践方法。
- オープンリサーチ:研究結果、データ、プロトコル、研究プロセスのその他の重要な部分にアクセスできるようにすることであり、最良の研究実践のアイデアの形態。
リンク
[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャーがNatureおよびNature関連リサーチ誌においてゴールドオープンアクセス出版のオプションを2021年1月より提供開始
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※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。