シュプリンガー・ネイチャーの新たな調査は「Going for Gold(ゴールドOAを追求)」の価値を確認
2021年11月1日
シュプリンガー・ネイチャーが本日新たに発表した白書は、著者および研究者にとってゴールドオープンアクセス(OA)が最適であることを示す報告が相次いでいる事実をさらに深めています。
ロンドン|ニューヨーク|ハイデルベルク 2021年10月27日
シュプリンガー・ネイチャーの2018年版の白書、Assessing the open access effect for hybrid journals は、「OA効果」に注目し、ハイブリッドジャーナルにおけるOA論文が比較する非OA論文よりもインパクトが大きく、使用回数が多く、リーチが広かったことを報告しました。
今回の新たな白書、Going for gold: exploring the reach and impact of Gold open access articles in hybrid journals は、これまでの白書に加えて重要な分析結果を報告しています。このたびの調査から、OAリポジトリーに初期バージョン(グリーンOAで公開されている受理原稿など)が存在する特定の一部非OA購読論文には、有意性のある「グリーンOA効果」がないことが確認されました。具体的には、最終公開版(VOR;Version of Record)論文が購読料の壁に阻まれたままであるため、それに関連する「グリーン」版の利用性は、ゴールドOAの利点に十分追いついていないといえます。
白書の結果の概要:
- ゴールドOA論文は、グリーンOAなどにより初期バージョンが利用可能な購読論文よりインパクトが大きい。非OA論文と被引用数を比較すると、平均してゴールドOA論文は1.64倍高くなるが、後者のタイプ(購読論文)は1.07倍に留まる。
- Altmetric Attention Scoresをハイブリッドジャーナルの非OA論文と比較すると、ゴールドOA論文は、注目と関心(attention and awareness)が5倍近くに達しているが、グリーンOAなどにより初期バージョンが利用可能な購読論文は、2倍高くなっているに過ぎない。
- ゴールドOA論文は、非OA論文の6倍以上もダウンロードされていることからもわかるように、継続して頻繁に利用されている。
- 分野によって異なるが、ゴールドOAのリーチとインパクトは、非OA論文や初期バージョンが利用できる購読論文より大きい。
シュプリンガー・ネイチャーのChief Publishing and Solutions OfficerであるSteven Inchcoombe(スティーブン・インチコーム)は、次のようにコメントしています。
「シュプリンガー・ネイチャーでは、あらゆる一次研究を即時利用可能にするという目標を達成するには、完全(ゴールド)OAこそが最適かつ最も完全で持続可能な方法であると認識しています。それゆえに、これまで20年にわたり、ビジネスの柱として、出版しているすべての一次研究を完全OAに移行してきました。
「これまで実施してきた全調査から、次のような非常に明確な結論を示しています。最終的に公開されたVOR論文は、発見、共有、利用、再利用が可能となるよう、出版後即時に利用できるようにします。そして、より広いリーチ、高い注目度とインパクトによって著者に大きな利益をもたらすだけでなく、まさに研究者が利用したいと思うバージョンであることがわかっています。VOR論文への即時アクセスは、データやコードを含むオープンサイエンスに必要なすべての要素の統合ハブとして機能することで、科学と科学的プロセスに利益をもたらします。
「したがって、購読論文とひもづいているグリーンOA論文を完全ゴールドOA論文と同等にとらえようとする方針は、著者を誤った方向に導いていくでしょう。グリーンOAは、持続可能なOAオプションではないと同時に、引き続き図書購読料に頼ることになるため、研究者にとっては有用性と信頼性が弱まり、望ましいことではないうえ、また、著者にとっても恩恵が少なくなります。ゴールドOAの将来に投資を継続すること、さらには自ら選択したジャーナルにおいて著者自身がゴールドOAを選択できるように投資を継続することが重要です。」
備考
今回の白書および関連する白書は、Going for gold: exploring the reach and impact of Gold open access articles in hybrid journals のページからご覧ください。
用語解説
- ハイブリッドジャーナル(Hybrid Journal):購読型ジャーナルのうち、受理された論文をゴールドオープンアクセスで出版するオプションを著者に提供するもの。オープンアクセスで出版する場合には、論文掲載料(APC;Article Processing Charge)が発生します。
- 受理原稿(AM;Accepted Manuscript):ジャーナルで正式な査読が行われた後に受理された原稿。受理後に行われる原稿編集(コピーエディティング)や組版などがされていないバージョン。通常、受理原稿は、リポジトリーや著者のウェブサイトに掲載され、ジャーナルのウェブサイトには掲載されません。
- グリーンオープンアクセス(Green OA):オープンアクセスのリポジトリーなどにアーカイブされた原稿。おもに、原稿編集(コピーエディティング)や組版前の査読後の著者の受理原稿のことを指します。エンバーゴ期間後にアクセス可能になります。
エンバーゴ期間:論文の受理原稿をグリーンオープンアクセスでリポジトリーなどに公開するまで著者が待たなければいけない期間。エンバーゴ期間は、ジャーナルによって異なります。 - ゴールドオープンアクセス (Gold OA):出版社のプラットフォームにおいて、論文や書籍を論文掲載料や書籍出版料などを支払うことでオープンアクセスで出版するルートです。原稿編集(コピーエディティング)や組版後の最終公開版(VOR;Version of Record)。ゴールドOAで出版された論文は、掲載後直ちにオープンアクセスとなり、プラットフォーム上にて無料で閲覧可能となります。ゴールドOAの論文出版は、論文掲載料(APC;Article Processing Charge)や転換契約によって賄われています。
- 最終公開版 (VOR;Version of Record):紙媒体および、またはオンラインでジャーナルに掲載されるバージョン。原稿編集(コピーエディティング)や組版など、査読が完了した受理原稿をできるだけ明快で理解しやすくするために編集が行われる原稿。通常、出版社のウェブサイトでPDFおよび、またはHTML形式で掲載されます。
- オープンリサーチに関する基礎や用語解説は、「オープンリサーチとは?基本コンセプトと取り組み」をご覧ください。
参考リンク
- [プレスリリース] 新たな調査により、研究者が選好する論文のバージョンに関する知見を得る
- Springboard blog - Why we are ‘going for Gold’
- Springboard blog - From scholarly society journals to highly selective journals: finding sustainable models to transition to open access
- Springboard blog - Top-down coordination and bottom-up engagement: the burgeoning path to full O
シュプリンガー・ネイチャーについて
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