Press release

子供たちのお口の健康からレントゲン写真で原子が見える技術まで-「未来博士3分間コンペティション2021」(未来を拓く地方協奏プラットフォーム(HIRAKU)主催)の受賞者を発表

2021年11月24日

日本全国の大学院から勝ち抜いた22人のファイナリストは、3分間で自身の研究を一般の聴衆にわかりやすく伝えるオンラインスピーチ大会で競い合いました。

東京 2021年11月24日

今年で第7回目となる未来博士3分間コンペティション2021は、2021年11月3日にオンライン開催されました。本大会では、全国から集まった20人以上の博士課程後期学生が3分間で自身の研究ビジョンを伝える発表をしました。今回は、カンボジアの子供たちの口内の健康や生体内の原子を観察する胸部X線の実現、妊娠中における胎盤の機能不全の原因究明などに関する研究などを発表した学生を審査員が評価し、それぞれの発表者を表彰しました。また、世界10カ国からおよそ350人が聴衆として参加しました。

日本語部門の最優秀賞およびNatureダイジェスト動画賞をダブル受賞したのは、広島大学大学院医歯薬保健学研究科の浅尾 友里愛氏で、発表タイトルは、「お口の健康から子どもたちの未来を育む」でした。浅尾氏は、受賞の喜びを以下のように述べています。

「この度は、Natureダイジェスト動画賞を頂戴し、誠にありがとうございました。加えて、日本語部門の最優秀賞も受賞でき大変光栄です。2021年現在でも過去の内戦の影響が残るカンボジアですが、戦後に復興を遂げた日本とも重なる部分があります。正しい知識の普及と定着により予防できる疾患はたくさんあります。私は、お口の健康から全身の健康へアプローチする研究によって人々の笑顔があふれる未来を目指しています。国内外の多くの方々が携わる歯科医療支援活動がベースとなっている今回の研究内容について、さまざまな分野の方の前で発表する機会がもてたことを大変うれしく思っております」。

英語部門の最優秀賞を受賞したのは、東京大学大学院工学系研究科 精密工学専攻の島村 勇徳氏で、発表タイトルは、「Atomic-scale “chest X-rays” with ultrasmall mirrors(小さな鏡を用いた、原子が見える「レントゲン写真」)」でした。島村氏は、受賞の喜びを以下のように述べています。

「最優秀賞を賜り、光栄です。実は、3MTへの挑戦は今回が2回目です。それでも痛感することは、馴染みが無い「X線光学」という分野の存在をまず一般の方々に伝え、その上で背景・新規性・インパクトを社会と関連づけてまとめる難しさです。専門用語の厳選・直感的な表現・日常生活から広げる物語風の語りの3点を意識し、様々な英語レベルの友人達と共に本番まで推敲していきました。本番のライブ大会で最後評価いただけたのは、この地道な改善と友人達のおかげです。現在進行形で取り組む研究の醍醐味が伝われば、駆け出しの研究者として幸いです」。

シュプリンガー・ネイチャー賞および英語部門のオーディエンス賞をダブル受賞したのは、山口大学大学院共同獣医学研究科のLita Rakhma Yustinasari氏で、発表タイトルは、「A Mysterious Messenger in Placenta Break Down the Problems in Preeclampsia: Possible?(胎盤に存在する謎のメッセンジャーが妊娠高血圧腎症の問題点を打破する、その可能性は?)」でした。Lita Rakhma Yustinasari氏は、受賞の喜びを以下のように述べています。

「複雑なものを単純化して理解しやすくすること、特に異なる分野の一般の聴衆に伝えるのは、常にチャレンジングです。未来博士3分間コンペティションでは、自分が行った研究について、なぜしたのか、どのようにしたのかという研究ストーリーを、3分以内に魅力的な方法で明確に伝えることができました。そこで私は、胎盤から放出されるエクソソームという謎のメッセンジャーが郵便配達員の仕事に似ているというアイデアを説明しました。このエクソソームには、妊娠高血圧腎症に重要な役割を果たすmiRNA(マイクロRNA)が含まれています。このアイデアがきっかけで、英語部門のオーディエンス賞とシュプリンガー・ネイチャー賞を受賞できたことを光栄に思います。このような素晴らしい経験をさせていただいたことに感謝し、来年はさらに応募者が増えることを期待しています!」。

今回の大会では、28の大学から130件の応募がありました。動画審査を勝ち抜いた22人のファイナリストは、日本語部門ならびに英語部門それぞれのファイナル・ステージで1枚のスライドとともにオンラインで口頭発表を行いました。審査員会は、研究のビジョンや魅力、わかりやすさなどのコミュニケーション力の観点から、プレゼンテーションを審査し、22人の中から受賞者を選びました。

シュプリンガー・ネイチャーの日本の代表取締役社長であるアントワーン・ブーケは、英語部門の審査員として参加し、次のように述べています。

「Litaさんの発表は、妊娠高血圧腎症に関する現在の知識、自分の研究の仮説、そしてそれをどのように実行するかを明確に説明しており、すぐに目を引きました。妊娠高血圧腎症の新たな治療法を生み出す手がかりを見つけることに成功し、シュプリンガー・ネイチャー賞を受賞したことからもお分かりいただけるように、彼女のプレゼンテーションには説得力がありました。今回の大会では、質の高い研究発表とともに、魅力的でわかりやすい発表をするために、学生たちがさまざまなアプローチを試みている姿勢に非常に感銘を受けました」。

また、「3,000以上のジャーナルを発行し、毎年100万人の著者と連携している世界的な学術出版社である当社は、質の高い研究を出版するためのジャーナルやプラットフォームを提供することで、コミュニティーをサポートすることに常に注力しています。私たちは、Litaさんをはじめとする未来博士3分間コンペティションの発表者が、重要な研究をシュプリンガー・ネイチャーとの出版を検討する時が来ることを期待しています」とエールを送りました。

シュプリンガー・ネイチャーが発行する日本語の月刊誌、Natureダイジェストのマネージングエディターである宇津木 光代は、日本語部門の審査員として参加し、次のように述べています。

Natureダイジェスト賞を受賞した浅尾さんの研究において素晴らしかったのは、その取り組みが現地の人たちによって続けられる必要があると気づき、知識が引き継がれる仕組みを作って、数年をかけて成果を出されたことです。科学の力でカンボジアの人たちの健康を改善ができたこの研究は、カンボジア以外の場所でも必要とされていると思います。浅尾さんの今後のアイデアと研究を楽しみにしています」。

広島大学学長特命補佐(研究人材育成担当)であり、日本語部門の審査員長を務めた相田 美砂子氏は、今回のコンペティションを振り返って次のように述べています。

「未来博士3分間コンペティションは2015年から、年に1回、開催しています。2019年までは、ステージ上でスライド1枚を背に、自分の研究を3分間で、身振り手振りで熱心に説明する、迫力のあるものでした。コロナ禍のため、2020年からオンライン開催としており、そのため、国内の多くの大学から多数の参加申込があります。今年は、事前のビデオ審査でファイナリストを11人に絞りました。オンラインでの発表は、ステージ発表とは別の工夫も必要です。今年は、昨年よりもさらに、表情豊かに、わかりやすく説明することができていたと思います」。

広島大学理事・副学長(学術・社会連携担当)であり、英語部門の審査員長を務めた安倍 学氏は、今回のコンペティションを振り返って次のように述べています。

「2021年度の未来博士3分間コンペティションの英語部門では、全国の大学から70件の応募があり、動画審査に基づいてファイナリストが選定されました。ファイナリストは、長崎大学、広島大学、京都大学から各2名、金沢大学、静岡大学、山口大学、東京大学、筑波大学から各1名の11名の博士課程後期学生であり、11月3日には、ライブでの発表と質疑応答が活発に行われました。言語学に関する研究から先端医療機器に関する幅広い研究が熱く語られました。3分間で如何に聴衆者を魅了できるか、という勝負が繰り広げられ、最優秀賞、優秀賞、オーディエンス賞を3名の学生が受賞しました。いずれも甲乙つけがたい審査結果であり、ファイナリスト全員に特別賞を授与したいと感じました。これを期に、研究をより深め人、社会を魅了する研究者になっていただきたいと思います」。

本大会は、「未来を拓く地方協奏プラットフォーム(HIRAKU)」(代表機関:広島大学)が主催し、シュプリンガー・ネイチャーは、2017年より本大会をサポートしています。

日本語部門の受賞者および審査員

英語部門の受賞者および審査員

リンク

HIRAKUは、文部科学省の実施する科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業「次世代研究者育成プログラム」の取組で、「未来を拓く地方協奏プラットフォーム」をテーマに、広島大学が代表機関、山口大学と徳島大学が共同実施機関となり、中国・四国地方を中心とする西日本の国公私立大学、そして多くの企業や公的機関の協力を得て実施しています。詳細は、こちらをご覧ください。

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宮﨑 亜矢子
シュプリンガー・ネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
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E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

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