Nature Index 2022 Annual Tablesでは、中国の研究機関が圧倒的な存在感を示す
2022年6月16日
日本と英国の研究機関は、Nature Indexで世界のトップ10入りを逃し、2015年以降で最も低いランクを記録しました。
東京
本日発表された2022年版のNature Index Annual Tablesは、質の高い自然科学研究を発表している機関と国について分析しているものであり、2022年のランキング表では、中国の機関が唯一、その研究成果の発表(アウトプット)を大きく伸ばしていることを示しています。上位10機関のうち、4機関が中国の機関であり、中国の機関が1機関のみ上位にランクインした2021年から大きくその数を増やしています。
2012年以来、中国科学院(CAS;Chinese Academy of Sciences)は、Nature Indexでトップの地位を維持しており、2021年のShare*は1,963.00です。これは、2位のハーバード大学(米国)のShare*である910.93の2倍以上となります。3位は5年連続でマックスプランク協会(ドイツ)で、そのShareは782.72です。
2022 Nature Index Annual Tablesにおいて、中国科学院大学(UCAS;University of Chinese Academy of Sciences)が初めて世界のトップ10にランクインし、13位から8位に躍進したとともに、東京大学が8位から14位にランクダウンし、これは2015年以降最も低い順位です。
また、中国科学技術大学(USTC;University of Science and Technology of China)が2つ順位を上げて9位、北京大学(PKU;Peking University、中国)も2つ順位を上げて10位のポジションを確保しました。これにより、英国のトップ機関であるオックスフォード大学とケンブリッジ大学は、2022年のランキングでは、それぞれ13位と16位となります。昨年(2021年)の機関ランキング表では、これら2大学はそれぞれ、9位と10位でした。
Nature Indexの上位10カ国を見ると、米国は2021年のShareが19,857.35で首位を維持しているものの、2021年のアウトプットは6.2%減で、上位10カ国で最大の減少率となり、Adjusted Share**で測定すると2015年から最も急激に減少しました。2位の中国のShareは16,753.86で、2021年のアウトプットは14.4%増加し、2022年版のランキング表の上位10カ国の中で最大の増加率でした。
上位10カ国の順位は2021年と変わらず、米国、中国、ドイツ、英国、日本、フランス、カナダ、韓国、スイス、オーストラリアが上位を占めています。上位10カ国のうち、アウトプットが増加したのは中国(+14.4%)と韓国(+2.3%)のみで、日本を含むほかの8カ国はアウトプットが減少しています。
Nature Indexはゼロサムゲームであり、Indexに登録されているジャーナルに掲載される論文の数は年間約6万本と有限であることを留意する必要があります。今回、中国の研究機関がアウトプットを非常に伸ばしてきたために、Indexの対象となる82誌における出版の競争において、結果として、ほかの国の研究機関はその順位が下がりました。
Nature Indexの創設者であるDavid Swinbanks(デイヴィッド・スウィンバンクス)は、次のようにコメントしています。
「今年のNature Index Annual Tablesは、中国が大規模で定評のある研究機関を通じた研究への投資が、自然科学分野での持続的な研究成果をもたらしていることを示しています。2021年、中国の研究への投資は中国のGDPの2.4%を占め、この分野における中国のコミットメントを示しました。今年は、ほかの国、特にドイツ、英国、フランス、日本で見られた変化と比べると、中国の資金提供による研究の成長への影響がより際立っています」
これらのランキング表から得られる結論について、Swinbanksは次のように付け加えています。
「Annual Tablesは、自然科学における高い研究成果を示す良い指標ですが、読者が研究の質や機関業績を考える際に、データ、ソフトウェア、知的財産などほかの科学的成果とともにこの調査結果を利用することを推奨しています」
<Nature Index 2022:日本の研究力>
2022年のNature Index Annual Tablesでは、日本のShareは3,185.12、アウトプットは5.2%減少し、米国(-6.2%)、英国(-5.7%)、フランス(-5.7%)に続く第4位の減少幅です。
2022年の世界の研究機関ランキングでトップ100にランクインしたのは、東京大学(2022年:14位、2021年:8位、2020年:11位)、京都大学(2022年:37位、2021年:37位、2020年:37位)、大阪大学(2022年:64位、2021年:65位、2020年:63位)、および理化学研究所(2022年:87位、2021年:74位、2020年:101位)です。上位100位内の日本の機関は、大阪大学(+0.1%)を除き、2021年中のアウトプットが減少しました。日本の機関の2021年のAdjusted Shareは、京都大学が4.2%、東京大学が5.5%、理化学研究所が7.9%減少しました。
2021年にトップ100機関(2022年に更新)にランクインした東北大学および名古屋大学は、今回トップ100からランクダウンしました。
日本の機関はライフサイエンス分野で強みを発揮し、大阪大学、熊本大学、および慶應義塾大学がRising Institutions(2020―2021年)のトップ50にランクインしました。
※ この順位は2022年6月16日時点のものです。Nature Indexのデータベースは定期的に更新されますので、最新の順位はnatureindex.comをご参照ください。
2022年の研究機関ランキングは、2021年1月1日から2021年12月31日までのNature Indexデータにもとづいて、Shareでランキングされた上位機関を示しています。 2021年の研究機関ランキングは、natureindex.comでご覧いただけます。
リンク
*Nature Indexの特徴的な指標であるShare(シェア)は、機関、都市、国・地域に割り当てられた論文の小数カウントで、その機関や地域に所属する著者の割合を考慮しています。
** Adjusted Share(調整後のシェア)は、Nature Indexに掲載されている論文の総数の年間変動を考慮しています。詳細については、natureindex.com/glossaryをご覧ください。
分野別のテーブルや指標など、そのほかの記事については、natureindex.comをご覧ください。
注記: Nature Indexは、機関の研究パフォーマンスにおける1つの指標です。Nature Indexのリストを作成するために使用されるCountとShareの測定基準は、その分野の主要な科学者によって構成された独立したパネルによる評判にもとづいて選択された、82の自然科学ジャーナルにおける機関または国・地域の論文出版の成果にもとづいています。Nature Indexは、研究の質と機関のパフォーマンスを検討する際には、そのほかの多くの要素を考慮しなければならないことを認識しています。Nature Indexの指標のみを機関や個人の評価に使用することを推奨しておりません。Nature Indexのデータとメソッドは透明性があり、natureindex.comのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにもとづいて利用可能です。
Nature Indexについて
2014年11月に初公開されたNature Indexは、所属する著者および機関の関係を示すデータベースです。Nature Indexは、独立した研究者グループによって選ばれた、82の質の高い自然科学ジャーナルに掲載された研究論文への貢献度を追跡します。これらのジャーナルは、自然科学における主要な研究者58名の委員会によって選出されました。委員会は、自身の優れた研究成果を最も発表したいジャーナルを推薦しています。この選出基準は、世界中の6,000人を超える科学者の調査によって検証されました。Nature Indexの82のジャーナルは、Web of Science(クラリベイト・アナリティクス社)の自然科学を網羅するジャーナルの4〜5%を占め、自然科学ジャーナルへの総引用の30%近くを占めています。詳細は、Nature Indexのジャーナルリストをご覧ください。Nature IndexのAnnual Tablesは、2016年より、毎年一回発表しています。
Nature Indexは、機関レベルおよび国・地域レベルでの発表論文の絶対数および割合数を提供します。そのため、質の高い研究成果および共同研究のグローバルな指標となります。Nature Indexのデータは定期的に更新され、直近12か月のデータは、natureindex.comのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにもとづいて利用可能になります。 データベースは、シュプリンガー・ネイチャーによって管理されています。詳細につきましては、Nature IndexのFAQをご覧ください。
Nature Indexでは、研究成果発表数の指標として以下の種類のカウント法を採用しています:
- Count(カウント)(以前の名称:Article count(AC))– 論文において、ある国ないし機関から1人でも著者として名前が挙げられていれば、その国ないし機関の論文1点(Countを1)として数える計算方法。その論文に著者が1人しかいなくても、100人の著者がいても、それぞれの著者の所属国(または機関)において論文1点として数えられることになるため、同じ1本の論文が、複数の国(または機関)においてCountとして数えられることを意味します。
- Share(シェア)(以前の名称:Fractional count(FC))– Shareは、ある論文に対する各共著者の相対的貢献度を考慮に入れる方法。論文1本につき最大Shareは1.0です。この1点分を、共著者全員が等しく貢献したという仮定のもと、共著者間で等しく分けます。例えば、10人の共著者がいる論文の場合、各共著者はそれぞれ0.1分のShareを割り振られることになります。(Nature Indexは、国、地域、または機関による論文への貢献を収集し、それらが2回以上カウントされないようにするために、Shareを使用します。機関のShareの合計は、個々の所属著者のShareを合計して計算されます。この計算法は、国と地域で同じですが、一部の機関は海外に研究拠点があり、ホスト国・地域の合計にカウントされるため、複雑になっています。)
ネイチャー・ポートフォリオについて
ネイチャー・ポートフォリオは、生命科学・物理学・化学・応用科学など多岐にわたる分野で高品質のジャーナル、オンラインデータベース、研究者を対象としたサービスなど、科学界への貢献を目的としたサービスから成るポートフォリオを提供しています。
1869年創刊のNature は、世界有数の週刊の国際科学雑誌です。さらに、ネイチャー・ポートフォリオは、Natureリサーチ誌とNatureレビュー誌をはじめ、オープンアクセスの主要な学際的ジャーナルであるNature Communications 、Scientific Reports など、研究機関と学会の協力によるNature Partner Journalsも出版しています。これらのジャーナルには、世界で最も重要な科学的発見が掲載されています。
オンラインのnature.comには、1カ月当たり900万人を超えるユーザーが訪れ、Nature のニュース記事やコメント記事、そしてNature Careersなどの科学求人サイトにアクセスしています。また、ネイチャー・ポートフォリオは、オンラインおよび対面によるトレーニングや専門家による英文校正サービスなど、さまざまな研究者支援サービスも提供しています。
詳しい情報については、nature.comをご覧いただき、 @NaturePortfolio のフォローをお願いいたします。ネイチャー・ポートフォリオは、シュプリンガー・ネイチャーの一部です。
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宮﨑 亜矢子
シュプリンガー・ネイチャー
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※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。