「未来博士3分間コンペティション2022」(未来を拓く地方協奏プラットフォーム(HIRAKU)主催)の受賞者を発表―地球規模の問題対策から個人の健康まで
2022年12月12日
日本全国の大学院から勝ち抜いた20人のファイナリストは、3分間で自身の研究を一般の聴衆にわかりやすく伝えるスピーチ大会で競い合いました
今年で第8回目となる未来博士3分間コンペティション2022は、2022年11月23日に広島大学の会場とオンラインでの参加者を結んで、ハイブリッド開催されました。このコンペティションは、2008年にオーストラリアのクイーンズランド大学で始まり2011年から成長を続け、現在は世界85の国で900超の大学で開催されています。日本では広島大学を代表機関とする「未来を拓く地方協奏プラットフォーム(HIRAKU)」が2015年から「未来博士3分間コンペティション」を実施していており、シュプリンガーネイチャーは2017年から広報面などをサポートしています。
HIRAKUは「Home for Innovative Researchers and Academic Knowledge Users 」 の頭文字をとって「HIRAKU」、「拓く」とかけます。日本語では「未来を拓く地方協奏プラットフォーム(HIRAKU)」と表します。HIRAKUの存在は、文部科学省が実施する「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」において、2019年度にその実施機関として広島大学が選定されたときにも確認されています。この文部科学省の事業の背景には、論文数に関する我が国の国際的地位が質的・量的ともに低下してきている中、人口減少局面にある我が国が 研究力の強化を図るためには、研究者の研究生産性の向上を図ることが急務であるという考えがあります。本事業の目標の一つに、世界のトップジャーナルへの論文掲載や海外の研究費獲得等に向けた支援体制など、研究室単位ではなく組織的な研究者育成システムを構築し、優れた研究者の戦略的育成を推進する大学・研究機関を支援することがあります。シュプリンガーネイチャーがHIRAKU事業を支援する理由もここにあります。
このスピーチ大会の目的は、未来博士のプレゼンテーション力、コミュニケーション力やアピール力の向上を図ること、そして社会における博士人材と博士研究に対する理解を広めることです。また大会開催後には、ファイナリストに対して多様なその他のネットワーク・インベントへの招待など、新しいネットワークと専門職としての成長の機会が提供されます。
今大会では、18大学69件の応募の中から、日本語部門と英語部門からそれぞれ各10人、合計20人の博士課程後期学生が3分間で専門知識を持たない人にも理解できる言葉で自身の研究のビジョンと魅力を伝えました。オンサイトとオンラインを合わせた当日の参加者はおおよそ330人でした。日本語部門と英語部門のそれぞれから、最優秀賞、優秀賞、オーデイエンス賞およびシュプリンガーネイチャー冠動画賞が選ばれました。
日本語部門の最優秀賞とシュプリンガーネイチャー動画賞をダブル受賞したのは名古屋大学 大学院生命農学研究科 応用生命科学専攻の大江 史花氏で、発表タイトルは「メタンを食べる菌でSTOP地球温暖化」でした。大江 史花氏は受賞の喜びを次のとおり述べています。
「この度は、シュプリンガーネイチャー賞および日本語部門最優秀賞を頂戴し、非常に光栄です。私は、研究室のメンバーに原稿を添削していただいたので、あとは練習をするだけと考えていました。しかし、他分野の研究者に発表を聴いていただくと、重要なキーワード「メタン」が分かりにくいという指摘を受けました。そこで、導入部分の説明を増やし、より理解しやすいプレゼンテーションにすることができました。この3MTでの成功体験を活かし、「メタンを食べる菌でSTOP地球温暖化」を実現するためのアウトリーチ活動を続けていきます。」
英語部門の最優秀賞とオーディエンス賞をダブル受賞したのは、広島大学 大学院統合生命科学研究科 統合生命科学専攻のJason Braga氏でした。発表タイトルは「A Food to Remember」でした。Jason Braga氏は受賞の喜びを次のとおり述べています。
「この度は、オーディエンス賞および英語部門最優秀賞をいただき、恐縮とともに大変に光栄です。そのうえ、大塚動画賞も受賞いたしました。この「コンペティション」については、すべて夢のようです。私は参加者のコメントを読みながら、有頂天にもなりました。何故なら、参加者の皆さんに私たちの研究の考え方や目的を理解して頂けたということが、私たちの研究活動について簡単な言葉を使って内容を説明するというこの「コンペティション」の目的であるからです。ここに、信頼する指導教官であるDr. Thanutchaporn Kumrungseeおよび フィリピンー広島大学学生協会の皆さんに、この「コンペティション」での受賞を信じてご支援いただいたことに感謝いたします。さらに、このような生涯一度の貴重な体験の機会をいただけたことに対して、3MTの実施に関わった方々に生涯感謝いたします。Maraming Salamat!」
続いて、優秀賞は、山田 あずさ氏 (九州大学)の「毛髪常在菌が髪の毛の健康を制御する」とQi Luan Lim 氏(京都大学)の「Malayan Tapir Conservation through Conserving its Global Genetic Diversity」、オーディエンス賞は、朝山 晃 氏 (大阪大学)の「遺伝子治療に向けた新規ゲノム編集技術の開発」、そしてシュプリンガーネイチャー動画賞は、Shiamita Kusuma Dewi氏 (岐阜大学)「Fate of plastic mulch residues in agricultural soil ecosystem and its influencing factor」が受賞しました。最後のShiamita Kusuma Dewi氏は、ファイナリストではありませんが、今回特別にシュプリンガーネイチャー動画賞を受賞しました。その理由は、彼女の研究の要約の見事さに始まり、専門知識のない聞き手の心に、微細なプラスチック粒子の土壌環境への影響とその農業経済学に対する潜在的可能性に関する問題点と研究の目的がスムーズに伝わったこと、そしてその問題点を明確に理解して彼女の研究についてもっと知りたいと思わせてくれたことです。
東北大学 名誉教授および特定非営利活動法人(NPO法人)日本科学振興協会 代表理事であり、審査委員長を務めた原山 優子氏は次のとおり総評しています。
「今年もまた審査員会は非常に難しい判定を下さなければなりませんでした。なぜならすべてのファイナリスト候補者から研究に対する熱意、研究を介して社会に貢献したいという強い気持ちがひしひしと伝わってきたからです。オーディエンス賞、優秀賞、最優秀賞はそれぞれ一人ずつ選ばれましたが、本日のプレゼンテーションはすべて、チャレンジングな研究テーマに独自の視点から切り込み、サイエンスに新たな一石を投じるポテンシャルを持つものでした。直近の目標である博士号取得のその先を見据えて、皆様の活躍に大いに期待します。」
シュプリンガーネイチャーのアカデミック・エンゲージメント・ディレクターであり、審査委員として参加した浦上 裕光は次のとおり述べています。
「ファイナルステージでは20の大変素晴らしい研究と臨場感のあるストーリーを「体験」させていただきました。ファイナリストの皆さんが、共通して「自分たちの研究を通しどの様に社会に貢献できるか」を研究室の枠を超えて積極的に考えている思いが深く印象に残ると同時に刺激的でした。オンサイト、オンラインを問わず参加者全員が何かを感じ取り、学びを得た一日になったのではないでしょうか。3MTは多くの学生に研究コミュニケーションの重要さや面白さを認識してもらうきっかけになっていることを嬉しく思います。近い将来、3MTのプレゼンターの皆様が研究成果を出版される際、シュプリンガーネイチャーを候補の一つとしてご検討いただけたら光栄です!」
本大会も、多くの未来博士の皆様が、「世界で活躍できる研究者」を目ざして前進するための機会となりました。
シュプリンガーネイチャーについて
シュプリンガーネイチャーは、180年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、公開するすべての研究が重要でロバストであり、客観的な精査にも耐え、関心を持つすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良サービスを提供します。
学術出版社として、シュプリンガーネイチャーは、シュプリンガー、ネイチャー・ポートフォリオ、BMC、Palgrave Macmillan、Scientific Americanなどの信頼されたブランドを有しています。詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。
HIRAKUについて
HIRAKUは、文部科学省の実施する科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業「次世代研究者育成プログラム」の取組で、「未来を拓く地方協奏プラットフォーム」をテーマに、広島大学が代表機関、山口大学と徳島大学が共同実施機関となり、中国・四国地方を中心とする西日本の国公私立大学、そして多くの企業や公的機関の協力を得て実施しています。詳細は、こちらをご覧ください。
本件に関するお問い合わせ
三木 律子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ritsuko.miki@springernature.com