Press release

2024年版Nature Index発表:アジアの研究機関が大きく躍進し、欧米の研究優位性が着実に低下していることが明らかに

2024年6月18日

2024年のNature Index Research Leadersの上位40機関のランキングにおいて、インドの機関による研究論文の発表数(アウトプット)の成長率が最も高く、中国を上回っていることが明らかになりました。

ロンドン|ベルリン|ニューデリー|ニューヨーク|東京 2024年6月18日

本日公開されたNature Index Research Leaders 2024(以前の名称:Nature Index Annual Tables)は、インドの研究論文の発表数(アウトプット)が急速に伸びていて、Nature Indexが対象とするジャーナルに対する同国からの貢献は、中国を上回る高い成長率を見せていることを示しています。Nature Indexは、著者の所属および機関の関係を示すオープンデータベースです。独立した研究者グループによって選ばれた、145の自然科学分野および健康科学分野のジャーナルに掲載された研究論文*1への貢献を追跡しています。

2014年にNature Indexが発表されて以来、中国はShare(シェア;Nature Indexの対象論文において、特定の拠点の著者による貢献度を測る指標)の成長率で際立った存在感を示してきました。2022年には、中国が米国を抜いて、自然科学分野の国別のアウトプットでトップとなりました。また、Nature Indexに健康科学分野のジャーナルが追加された翌年の2023年には、中国は、自然科学分野と健康科学分野を合わせた総合順位で首位となりました。

2023年のインド全体のShareは、1,494.27で、中国のShareの23,171.84に比べるとはるかに低いものの、その成長率は、中国と同等以上です。2022年から2023年にかけて、インドはAdjusted Share(調整後のシェア)で14.5%増加しました。一方、中国のAdjusted Shareの成長率は、13.6%の増加でした。Adjusted Shareとは、Nature Indexに登録された論文総数の年間変動を考慮したパーセンテージ変化の指標です。

今年のNature Indexの公開に際して、Nature IndexのChief EditorであるSimon Baker(サイモン・ベーカー)は次のように述べています:

「中国の急成長など、Nature Index全体で毎年似たようなパターンが見られます。しかし、今年は、いくつかの国や地域における研究資金の多様化、政策による義務、および研究機関の増加により、アウトプットの大幅な増加がありました。中国に関する多くの傾向は変わらないものの、今年の注目は、インドがNature Indexのジャーナルへの貢献において、著しい成長率を示したことです」

「なお、Nature Indexがゼロサムゲームであることに注意する必要があります。特定の国や機関からのアウトプットの増加は、必然的にほかの国や機関の低下を引き起こします」

今年のResearch Leaders全体のおもな傾向は、次のとおりです:

  • 日本の研究状況は、ポジティブな変化を見せている。2022年から2023年にかけて、日本のAdjusted Shareは1.7%減少したものの、これはほかの多くの欧米諸国が見せた減少幅や、日本が2017年から2022年にかけて記録した約20%のShareの急落に比べると、ゆるやかな減少である。*2
  • 世界全体のAdjusted Shareのランキングではトップ10に入っているにもかかわらず、多くの欧米の主要国のAdjusted Shareは減少を記録し続けている。英国は8.2%減、アメリカは7.1%減、ドイツは6.8%減となった。一方、デンマークのみ例外で、11.8%増加した。
  • ヨーロッパの多くの国・地域の2023年のShareが全体的に減少した。また、英国は、特定の分野(生物科学、環境科学、化学)において、Adjusted Shareのより深刻な減少が見られた。

Academic(学術)機関のランキングに関するおもな考察は次のとおりです:

  • 中国の機関は、総合ランキングの上位10位のうち7つを占め、地球環境科学、物理科学、化学、自然科学の分野でも上位10機関の大半を占めている。
  • 米国の機関は、Nature & Scienceの論文数ランキング、そして生物科学分野ランキングで依然として強い存在感を示している。
  • ヨーロッパでは、トップ100の中で最も際立っている機関は、52位にランクインしたデンマークのコペンハーゲン大学である。ほかのほとんどのヨーロッパの機関が順位を下げたなか、コペンハーゲン大学のShareは11.4%増加した。Nature & Scienceの論文数ランキングでは、英国のオックスフォード大学が18.7%増で7位、健康科学分野ランキングではスウェーデンのカロリンスカ研究所が5.9%増加して10位にランクインした。

今年のResearch Leadersに関する概説は、nature.comでご覧いただけます。また、すべてのデータと分析はNature Indexのページで公開しています。

注釈

*1 2024年のランキング表は、145のジャーナルにわたって、2023年に出版された75,707報の論文をもとに作成しています。

*2 Nature Index - How Japanese science is trying to reassert its research strength

<Nature Index 2024:日本の研究力>

2023年より、Nature Indexのデータベースでは、合計145誌にわたって、これまでの自然科学のジャーナル75誌と学際的ジャーナル5誌に加えて、医学ジャーナル65誌に掲載された一次研究論文も追加され、新たに健康科学分野の傾向を見ることができるようになりました。この分野の追加にともない、下記の概要は、自然科学分野と健康科学分野の両方を合わせた総合ランキングにもとづいた結果になります。

Nature Index 2024年の国・地域別ランキング

日本の2023年のShareは、2956.75であり、国別ランキングにおいて5位を維持するものの、全体のアウトプットは、前年から減少しました。日本のアウトプット(Adjusted Share)は、前年から1.7%減少し、中国を除く上位5カ国の中で最も少ない減少幅でした。上位5カ国の順位とアウトプットは次のとおりです:1位 中国(+13.6%)、2位 米国(−7.1%)、3位 ドイツ(−6.8%)、4位 英国(−8.2%)、5位 日本(−1.7%)。

Nature Index 2024年世界の研究機関ランキング

トップ100にランクインした日本の研究機関は、東京大学(2024年:19位、2023年:20位)、京都大学(2024年:47位、2023年:43位)、大阪大学(2024年:69位、2023年:78位)です。昨年、100位以内に入っていた東北大学(2024年:104位、2023年:99位)は、トップ100から外れました。

上位100位内の日本の機関の2023年のAdjusted Shareの差は、大阪大学が8.7%増加し、京都大学が−6.9%、東京大学が−3.2%、減少しました。

東京大学のAdjusted Shareの減少幅(−3.2%)は、Adjusted Shareが減少したトップ20の機関のうち、最も減少率が低かったフランス国立科学研究センター(全体機関順位6位、−0.7%)、米国のハーバード大学(2位、−3.1%)に次ぐものです。Adjusted Shareが増加したトップ20の機関のうち、ほとんどが中国の機関であり、最も増加率が高かったのは、中国の四川大学(SiChuan University;17位、+25.2%)でした。

日本の研究機関の国内における上位10機関の順位(Adjusted Share)は、次のとおりです(2023年と2024年の列では、世界の機関全体における順位)。

順位   

機関名

2023年

2024年

前年差

1

東京大学

20

19

+1

2

京都大学

43

47

-4

3

大阪大学

78

69

+9

4

東北大学

99

104

-5

5

北海道大学

141

119

+22

6

理化学研究所

114

123

-9

7

名古屋大学

154

128

+26

8

東京工業大学

156

169

-13

9

物質・材料研究機構

212

191

+21

10

九州大学

200

219

-19

Institution benchmarking for Japan

編集者への注記

Nature Indexは、Nature Research Intelligenceの一部であり、高品質な科学研究の世界をナビゲートし、情報にもとづいた研究の決定を行い、確信をもって共同研究を行うことができるよう支援します。

Nature Indexの一覧に掲載された大学・研究機関・企業に向けて「Nature Indexバッジ」を提供しております(無償)。このバッジは、ウェブサイトやSNSのプロモーションにご活用いただけます(例)。バッジをご希望の場合は、フォームにご記入のうえ、お申し込みください。

Nature Index Research Leadersは、自然科学および健康科学分野における高い研究成果を示す良い指標ですが、読者が研究の質や機関業績を考える際に、データ、ソフトウェア、知的財産などほかの科学的成果とともにこのデータベースによる結果を利用することを推奨しています。

なお、Nature Indexはゼロサムゲームであり、Indexに登録されているジャーナルに掲載される論文の数は年間約7万5000本と有限であることを留意する必要があります。今回、中国とその研究機関がアウトプットを非常に伸ばしてきたために、Indexの対象となる145誌における出版の競争において、結果として、ほかの国とその研究機関はその順位が下がりました。

Nature Indexに関する日本語ページ:https://www.natureasia.com/ja-jp/nature-index 

Nature Indexの指標について

Nature Indexは、機関の研究パフォーマンスにおける1つの指標です。Nature Indexのリストを作成するために使用されるCountShareの測定基準は、その分野の主要な科学者によって構成された独立したパネルによる評判にもとづいて選択された、合計145の自然科学(75)、健康科学(65)および多分野(5)のジャーナルにおける機関または国・地域の論文出版の成果にもとづいています。Nature Indexの主要な指標であるShareは、論文の著者のうち、その機関や地域に所属する著者の割合を考慮して、機関、都市、または国・地域に割り当てられる論文の分数カウントです。Adjusted Share (調整後のシェア)は、Nature Indexにおける論文の総数のわずかな年次変動を考慮に入れています。もう一つの主要なNature Index指標は、Countです。国・地域または機関は、その国・地域または機関から少なくとも1人の著者がいる各論文に対して、Countを1、与えられます。計算方法の詳細につきましては、下記をご覧ください。

Nature Indexでは、研究成果発表数の指標として以下の種類の算出方を採用しています:

  • Count(カウント)(以前の名称:Article count(AC))– 論文において、ある国ないし機関から1人でも著者として名前があげられていれば、その国ないし機関の論文1点(Countを1)として数える計算方法。その論文に著者が1人しかいなくても、100人の著者がいても、それぞれの著者の所属国(または機関)において論文1点として数えられることになるため、同じ1本の論文が、複数の国(または機関)においてCountとして数えられることを意味します。
  • Share(シェア)(以前の名称:Fractional count(FC))– Shareは、ある論文に対する各共著者の相対的貢献度を考慮に入れる方法。論文1本につき最大Shareは1.0です。この1点分を、共著者全員が等しく貢献したという仮定のもと、共著者間で等しく分けます。例えば、10人の共著者がいる論文の場合、各共著者はそれぞれ0.1分のShareを割り振られることになります。(Nature Indexは、国、地域、または機関による論文への貢献を収集し、それらが2回以上カウントされないようにするために、Shareを使用します。機関のShareの合計は、個々の所属著者のShareを合計して計算されます。この計算法は、国と地域で同じですが、一部の機関は海外に研究拠点があり、ホスト国・地域の合計に加算されるため、複雑になっています。)詳細については、https://www.nature.com/nature-index/glossary をご覧ください。
  • Adjusted Share(調整後のシェア)とは、Nature Indexに登録された論文総数の年間変動を考慮したパーセンテージ変化の指標です。

Nature Indexは、研究の質と機関のパフォーマンスを検討する際には、そのほかの多くの要素を考慮しなければならないことを認識しています。Nature Indexのデータとメソッドは透明性があり、https://www.nature.com/nature-index/ のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにもとづいて利用可能です。 

Nature Indexについて

2014年11月に初公開されたNature Indexは、所属する著者および機関の関係を示すデータベースです。Nature Indexは、独立した研究者グループによって選ばれた、合計145の質の高い自然科学と健康科学のジャーナルに掲載された研究論文への貢献度を追跡します。

Nature Indexは、機関レベルおよび国・地域レベルでの発表論文の絶対数および割合数を提供します。そのため、質の高い研究成果および共同研究のグローバルな指標となります。Nature Indexのデータは定期的に更新され、直近12か月のデータは、https://www.nature.com/nature-index/のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにもとづいて利用可能になります。 データベースは、シュプリンガーネイチャーの一部であるNature Research Intelligenceによって管理されています。

詳細につきましては、Nature IndexのFAQをご覧ください。

Nature Research Intelligenceについて

Nature Research Intelligence(NRI;ネイチャー・リサーチ・インテリジェンス)は、現実社会での影響に特に焦点を当てて研究機関の皆様に結果を提示します。それにより、研究プロジェクトから最大限のメリットを引き出すうえで最も効果的な研究戦略や共同研究を見極めることができます。

研究機関の皆さまは、Nature Research Intelligenceの幅広いデータ分析ソリューションを活用していただくことで、研究環境に関する詳細な評価を入手し、その分野における所属機関の順位を把握するとともに、情報過多にならない簡潔な研究概要書を作成することができます。これに加え、NRIは、皆さまが今後の研究戦略を策定し、最適化する支援もいたします。

詳細につきましては、nature.com/research-intelligenceをご覧ください。Nature Research Intelligenceは、シュプリンガーネイチャーの一部です。

ネイチャーポートフォリオについて

ネイチャーポートフォリオは、生命科学・物理学・化学・応用科学など多岐にわたる分野で高品質のジャーナル、オンラインデータベース、研究者を対象としたサービスなど、科学界への貢献を目的としたサービスから成るポートフォリオを提供しています。

1869年創刊のNature は、世界有数の週刊の国際科学雑誌です。さらに、ネイチャーポートフォリオは、Nature リサーチ誌とNature レビュー誌をはじめ、オープンアクセスの主要な学際的ジャーナルであるNature Communications 、Scientific Reports など、研究機関と学会の協力によるNature Partner Journalsも出版しています。これらのジャーナルには、世界で最も重要な科学的発見が掲載されています。

オンラインのnature.comには、1カ月当たり900万人を超えるユーザーが訪れ、Nature のニュース記事やコメント記事、そしてNature Careersなどの科学求人サイトにアクセスしています。また、ネイチャーポートフォリオは、オンラインおよび対面によるトレーニングや専門家による英文校正サービスなど、さまざまな研究者支援サービスも提供しています。

詳しい情報については、nature.comをご覧いただき、@NaturePortfolioのフォローをお願いいたします。ネイチャーポートフォリオは、シュプリンガーネイチャーの一部です。

シュプリンガーネイチャーについて

シュプリンガーネイチャーは、180年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、出版するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心をもつすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良なサービスを提供します。

学術出版社として、シュプリンガーネイチャーは、シュプリンガー(Springer)、ネイチャーポートフォリオ(Nature Portfolio)、BMC、パルグレイブ・マクミラン(Palgrave Macmillan)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)などの信頼されたブランドを有しています。

詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。

本件に関するお問い合わせ

宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。

英語プレスリリース:Nature Index shows greater emergence of Asian research institutes and steady decline in Western research predominance

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