最新の報告書は、オープンデータが学術的成果に関するグローバル基準として認められつつあることを示唆
2024年12月3日
Digital Science、Figshare、およびシュプリンガーネイチャーが共同で発行している「The State of Open Data」報告書シリーズの最新版では、オープンデータの共有のグローバルな成長に関する定量的分析を実施
ロンドン|ニューヨーク|ベルリン 2024年12月2日
最新の分析によると、オープンデータの実践が現在では、学術的成果を裏付けるグローバル基準として認められつつあることが示唆されています。
Digital Science、Figshare、およびシュプリンガーネイチャーが共同で作成した「The State of Open Data」シリーズの最新版では、資金配分機関と国、および研究機関それぞれのレベルにおいて、論文著者間における直接的なデータ共有の実践について分析しています。分析によるデータは、オープンデータの共有の成功とグローバルな採用の増加を推進するおもな傾向を示しています。同時に、いまなお方針と実践との間にみられるギャップの解消に資する勧告の策定を可能にしています。
分析結果は、「The State of Open Data 2024」特別報告書「Bridging policy and practice in data sharing」に掲載されています。
本報告書の共同著者であり、VP of Open Research at Digital ScienceおよびFigshareの創設者であるMark Hahnel氏は、次のように述べています。
「現在では、オープンリサーチは必然であると断言することができます。オープンリサーチ全般を調べ、クローズドパブリッシングとオープンパブリッシングを比較したところ、現時点でオープンパブリッシングがクローズドパブリッシングを上回っていることが判明しました。現在は、毎年約200万件のデータセットが継続して公開されている状況にあります。この件数は、2000年に発表された論文と同じ件数です。今回の報告書は、現在のデータの共有を推進する真の原動力に関する貴重な知見を提示するものであり、また、このような数字を維持し、増加させるために何が有効であり、どのような取り組みが今後必要となるのかということを、コミュニティーとしての私たちに理解させるものです」
報告書のおもな調査結果を紹介します。
- オープンサイエンスを推進し、研究の透明性を高める取り組みの一環として、データ共有方針を策定している大学が増加しています。
2010年以降、大学からのデータにリンクした論文の数が全世界で着実に増加しています。データ共有方針には地域によって違いはみられるものの、差異は5–10%に留まっており、これまでデータにリンクしていなかった論文数(85%以上)と比較すると、さほど重要なものではありません。 - オープンデータイニシアチブの成功には、方針の背景となる多様な環境が反映されています。ただし、方針を策定するだけでは十分ではありません。
現在では、オープンデータの共有に関する方針にみられる差は世界的に解消されつつあります。そのことが「要請に応じた」共有の全般的な減少(1国を除き、1–9%の減少)の要因となっています。すなわち、現在の研究者は、より「自然に」データを共有しているのです。ただし、実際には、資金提供を受ける研究のタイプや地理的位置によってばらつきがみられており、また、方針が策定されたとしても、リポジトリーの共有が必ずしも大幅に増加するわけではありません。 - オープンリサーチの実践を採用する取り組みは全世界で増加していますが、データの共有に対する国レベルの動機による影響が見られます。
米国は、自身のデータの引用を動機とする研究者の割合が最も低く(4.88%)、資金配分機関の要請を動機とする研究者の割合が最も高くなっています(10.23%)。一方、エチオピアと日本は、いずれも自身のデータの引用を動機として強く重視しており(それぞれ9.3%と14.8%)、同じく資金配分機関の要請を動機としてさほど重視していない(それぞれ2.33%と1.67%)ことが示されています。 - リソースには依然として格差が見られます。
一部の国では、インターネットへの接続や研究機関のサポートにみられる制限や、認識の欠如が進展を妨げる要因となっています。分析対象とした10地域のうち*、米国と英国、ドイツ、およびフランスでは、リポジトリーの共有に同様の傾向がみられており、共有率は平均で約25%となっています。一方、ブラジルとエチオピア、およびインドにおける共有率は、依然として25%を大幅に下回っています。 - 多様な研究分野における課題への対応には長期的な取り組みが必要となります。
現在、データ利用可能性ステートメント(DAS:Data Availability Statement)方針の数が増加し、幅広い学術分野がその対象となっています。ただし、多くの分野では、コミュニティーにおける実践の確立や適切なリポジトリー、共有が困難な機密データを取り扱う能力が依然として不足しています。
本報告書の共同著者であり、シュプリンガーネイチャーのOpen Data Programme ManagerであるGraham Smith(グラハム・スミス)は、次のように述べています。
「私たちは、本報告書を通じ、オープンデータと研究の実践に関して必要となる対話を始めるきっかけを与えたいと考えています。実践面に存在する格差の認識と対処に資するグローバルデータを提供することにより、私たちはひとつのセクターとして、オープンデータの実践を採用するグローバルな取り組みをさらに加速するために必要な、標的とすべき実践的な次のステップを特定することができます。それにより、データを共有することの価値を認め、評価し、最終的にはデータの共有が学術的成功を支える柱、すなわちオープンサイエンスが完全に実現した未来へと移行するための鍵となる、より公平でアクセス可能な研究エコシステムを醸成することが可能となるのです」
今年の報告書では、3種類のデータソース、すなわちDimensions、シュプリンガーネイチャーのデータ利用可能性ステートメント(DAS)、およびChan Zuckerberg Initiative(チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ)による資金提供を受けたData Citation Corpusを組み合わせ、発表された査読付論文とデータセットとの間において利用可能なリンケージについて調査することに重点を置いています。上記のデータソースを組み合わせることにより、研究者が自身のデータを公開する方法とその基準に関するパターンを分析し、データの共有に対する真の動機に関する理解を深め、コミュニティーとして前向きな変化を実現する方法に関する情報を得るためのサポートを提供することが可能となっています。
本報告書では、研究者の行動についての分析と並行して、進展をさらに促進する4つの方法を提案しています。それは、4段階の変更プロセスの一貫した導入(方針、コンプライアンスの義務化、および評価)、知識への公平なアクセスの実現に向けた協力の強化、トレーニングの増加と標的を絞りこんだサポートを必要とする地域の特定、そして学術分野ごとのニュアンスをすべての人々がより強く認識することです。
今年の分析結果は、2025年1月23日のウェビナーで議論されます。 ご関心のある方は、ウェビナーにご登録いただき、#StateOfOpenDataで会話に参加してください。
すべてのデータと分析結果は、Figshareに掲載されている報告書からご覧いただけます: DOI:https://doi.org/10.6084/m9.figshare.27337476
編集者への注記
*国レベルの分析の対象としたのは、ボツワナ、ブラジル、中国、エチオピア、フランス、ドイツ、インド、日本、英国、および米国の10ヵ国です。
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本件に関するお問い合わせ
宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
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※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。
英語プレスリリース:New report suggests open data on edge of becoming a recognised global standard for scholarly output