植物病原体に対する耐性の付与
Nature Biotechnology
2010年3月15日
Building resistance against plant pathogens
病気にかかりやすいトマト、ジャガイモ類に、ある野生の植物から1個の遺伝子を導入すると、農作物の病原体に幅広く耐性を獲得するという。この結果が、もっと広く再現できれば、農作物の大きな被害を防ぐのに役立つとともに、農薬の使用による環境や健康への害、経済的負担を回避できるだろう。
多くの植物には、さまざまな病原微生物と闘うために、一般的な仕組みと非常に特異性の高い仕組みが両方備わっている。しかし、ある特定の病原体に対する耐性は、多くの場合植物の種によってさまざまに違いがある。病原体耐性をもつ作物を作る1つの方法は、目的とする病原体特有の分子によって活性化されると防御応答を引き起こす、特異的な受容体を発現させるというやり方である。しかし野外で栽培する作物では、植物の裏をかく巧妙な方法を病原体が見つけ出すため、この種の耐性は効果がなくなってしまうのが普通である。
C Zipfelたちは、多くの病原菌に存在する1つの因子によって活性化される免疫受容体に目をつけた。このパターン認識受容体(PRR)は、野生のカラシナの一種がもつ受容体で、ジャガイモ、トマト、タバコにはみられない。Zipfelたちがトマトとタバコの近縁種でこの遺伝子を発現させたところ、青枯れ病、斑点細菌病、根頭癌腫病などの原因となる4種類の細菌群に対し、耐性が強くなった。PRRの標的は、通常、病原体の生存に必須であり、この方法ならば、細菌が作物の耐性を克服しにくくなるのかもしれない。
このPRR戦略が実際に、現在の手法に比べてより持続期間の長い耐性を付与できるかどうかは、野外試験を行って調べる必要がある。
doi: 10.1038/nbt.1613
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