注目の論文
副作用の少ない新しい抗がん剤
Nature Biotechnology
2008年7月21日
New cancer drugs with reduced side effects
がんの治療に効く可能性のある新しいタイプの抗体-薬剤複合体(ADC)の報告が寄せられている。この治療法は、健康な細胞への毒性の軽減が期待されており、厄介な副作用が少なくできるかもしれない。
腫瘍を標的とする抗体は、非常に高い効率でがん細胞を認識する一方で、正常な細胞は無視する。標的への薬剤送達にこの性質をうまく利用しようと、化学療法薬を抗体に結合させてADCが作られてきた。これまでのADC作成法では結果はまちまちで、一部の抗体に他よりも多くの薬剤が結合してしまうために、最適な投与量を決めるのが難しかった。W Malletたちは、決まった量の薬剤を結合させてADCを作る新しい方法を編み出した。これまでのADCに比べて薬剤を抗体に再現性よく結合させるので、健康な細胞への悪い作用が少ないはずである。
Malletたちは、抗体の全体的構造やがん細胞認識力には影響を及ぼさずに、抗体の特定の部分を、薬剤が結合しやすくなるように改変した。マウスでの研究により、この新しいADCが従来のADCよりも有効で、これまでの約半分の投与量でこれまでと同程度の腫瘍殺傷効果が得られることが明らかになった。ラットやサルも従来のADCよりこの新しいADCを使うほうがよく投与に耐えることから考えて、ヒトの場合にもこの新しいADCのほうが副作用が少ないかもしれない。
doi: 10.1038/nbt.1480
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