エリマキシギの雄のモルフは「超遺伝子」によって決まっていた
Nature Genetics
2015年11月17日
A ‘supergene’ for alternative male morphs in the ruff
渉禽類の一種であるエリマキシギ(Philomachus pugnax)の雄には3種類の型(モルフ)があり、3つのモルフの配偶行動には大きな違いがある。その違いをもたらす遺伝的メカニズムが2つの研究によって解明され、複数の複雑な表現型が単一の遺伝要因によって制御される仕組みが明らかになった。
「independent」という雄のモルフ(全体の80~95%を占める)は多彩な色の装飾用羽毛を持ち、縄張りを守って雌に近づく。「satellite」という雄(全体の5~20%)は、唯一、白色の装飾用の羽毛を持ち、縄張りを持たず、independentに対して従順で、independentが注意をそらしたときを狙って交尾を行う。「faeder」という雄(全体の1%未満)は雌に似た外観をしており、攻撃的な「independent」の目につかないようにしている。これら3種類の雄のモルフは単一の遺伝要因によって制御されていることが判明している。
今回、Leif Andersson、Xin LiuたちのグループとTerry Burke、David Lank、Mark Blaxterたちのグループは、雄のモルフ間の行動と外観の複雑な違いが単純な遺伝的基盤によって生じることを詳しく解明するために、エリマキシギの雄のゲノムの塩基配列をそれぞれ独自に解読した。そして、ある染色体の1つの領域が、satelliteとfaederではindependentの逆向きになっていることを発見した。この逆位領域には、100個以上の遺伝子が含まれており、これらがひとかたまりで遺伝する1つの「超遺伝子」と考えることが可能だ。Anderssonたちは、逆位が最初に起こったのは約380万年前のことであり、その後変異が蓄積されて、satelliteとfaederの相違を生じたと推論している。一方、Burkeたちは、雄のモルフ間の行動の違いに寄与する可能性のあるホルモンシグナル伝達に関与する複数の遺伝子を同定した。また、両グループは、satelliteの白い装飾用羽毛をもたらしているのがMC1R遺伝子である可能性を明らかにした。
doi: 10.1038/ng.3430
doi:10.1038/ng.3443
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