【微生物学】ワクチン接種によるジャイアントパンダのウイルス感染死の予防可能性
Scientific Reports
2016年6月16日
Microbiology: Vaccination may prevent giant panda fatalities
絶滅危惧種のジャイアントパンダに関し、飼育中の全ての個体にイヌジステンパーウイルス(CDV)に対するワクチンを接種することが、ジャイアントパンダの保全活動を支援する正当な方法となる可能性を示した論文が、このたび掲載される。
中国陝西省の希少野生動物救急飼育研究センターで飼育されている「チェンチェン」という8歳のジャイアントパンダがCDV感染症の症状である顎の振戦と四肢のけいれんを呈したのは、2014年12月のことだった。そして、その後の14週間に、同じ飼育舎や隣接する飼育舎にいた別の4頭のジャイアントパンダがCDV感染症の臨床症状を示し始めた。これら5頭のジャイアントパンダは、発症から7~34日後に死亡している。また、別のジャイアントパンダ「チューチュー」もCDVに感染していることが分かったが、CDV感染症の症状は認められなかった。チューチューは、2012年にCDVに対するワクチンの接種を受けていたのだ。
今回、Yuwei Gaoたちは、CDVに感染したパンダのうちの1頭から採取した肺組織と脾臓組織からCDVを単離し、上述したCDV流行の原因となったウイルスのゲノムを解読、解析した。その結果、CDVのH遺伝子から5つの変異が同定された。こうした変異は、Asia-1株には見つかっていない。Gaoたちは、5つの変異のうちの1つであるHタンパク質の549位のアミノ酸の置換が、上記のCDV流行と関連する高い毒性の原因となっている可能性があるという考えを示している。
Gaoたちは、チューチューからCDVのゲノム物質が回収されたことは、CDVワクチンの接種によって誘発される免疫応答がCDV感染予防には不十分だったが、CDVの毒性を減弱させた可能性を示唆していると主張している。また、Gaoたちは、ジャイアントパンダを飼育している全施設においてサーベイランスの強化とCDVワクチンの接種を検討すべきだと提案している。
doi: 10.1038/srep27518
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