注目の論文

【進化】声で大きいふりをする

Nature Communications

2016年9月7日

Evolution: Pretending to be bigger is better

雄が雌よりも大きい陸上哺乳類種では、雄が自分の体のサイズを大幅に誇張する音声シグナルを発することを、今週の掲載論文が明らかにする。体が大きそうに聞こえることは、大きな雄を好む雌を誘引し、潜在的競争相手に交尾を思いとどまらせると考えられる。

体のサイズは一般に発声の音響周波数を規定しており、大きな個体は咽頭が大きく声道が長いため低周波音を発する。しかし、一部の種は咽頭が下がるなどの形質を有し、雄は体のサイズに似合わない低周波数の発声を行うことができる。

Benjamin CharltonとDavid Rebyは、コアラ、ライオン、チンパンジー、およびヒトなど72種の陸上哺乳類に関して、雄の音声の特徴と体のサイズとの関係を分析した。その結果、ある特定の種では、音声的誇張(不釣り合いに低周波数の音声)が体の大きな雄に有利な性選択と関係していることが分かった。しかし、精子の競争が激しい種には異常に高周波数の音声が認められ、配偶者を得るための誇張された発声の実現と、交尾後に卵を受精させるための強い精子の生産とのトレードオフが示唆された。

ヒトでは、発話に関係する選択圧が体のサイズの割に短い声道を進化させたと考えられているが、成人男性は咽頭が下がっていて低い声を出すことができる。今回の研究結果は、こうした形質の関係を整理するとともに、ヒトの音声コミュニケーションに関する今後の研究に有用な比較結果を提供する。

doi: 10.1038/ncomms12739

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