ゲノムから河川盲目症の治療のための新しい標的が明らかになった
Nature Microbiology
2016年11月22日
Genome reveals new targets for treating river blindness
オンコセルカ症としても知られる河川盲目症を引き起こす寄生虫の完全なゲノム塩基配列解読が初めて完了し、既存の薬剤の再評価により標的できる可能性のあるタンパク質の一覧が明らかになったことが報告された。これは治療を開発するための新しい出発点となる。また同時に、これに関連する論文も掲載され、これら2つの研究から、河川盲目症の原因となる寄生虫およびその寄生虫の体内に生息する内部共生菌ボルバキアの生理学的性質や進化を理解するためのこれまでにない手掛かりが得られた。
河川盲目症は、寄生蠕虫の回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)によって引き起こされ、サハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ、イエメンで約1,700万人が罹患していると推定されている。回旋糸状虫の幼虫は、皮膚や眼に移動して、アレルギー型の免疫応答を開始させることで、皮膚炎や、視力の低下や失明につながる可能性がある角膜の損傷を引き起こすことがある。このような幼虫を薬剤により標的することで一定の成功が収められているが、現在、成体の回旋糸状虫を死滅させる薬剤も、新規感染を防止するワクチンも存在しない。
今回の1つ目の研究でElodie Ghedinたちは、回旋糸状虫とその内部共生菌ウォルバキアの完全なゲノムについて説明し、回旋糸状虫の8段階の生活環で発現しているタンパク質コーディング遺伝子12,000以上を突き止めた。著者たちは、これらのゲノムや関連するデータセットにより、河川盲目症や寄生蠕虫の感染に伴って生じる他の疾患に対して、新規介入や緊急に必要な介入を開発できると考えている。
2つ目の研究ではMakedonka Mitrevaたちが、地理的に異なる地域の回旋糸状虫分離株から新しいゲノムを構築し、そのゲノムの多様性について説明した。核DNA、ミトコンドリアDNA、内部寄生菌DNAに多様性があることが明らかになった。この結果は、河川盲目症を根絶するために進行中の制御プログラムに重要な意味を持ち、また薬剤、ワクチン、診断のための標的の特徴を明らかにする取り組みを促すと考えられる。
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.207
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