注目の論文
【感染症】3種の寄生虫病に共通の有望な治療標的
Nature
2016年8月9日
Infectious disease: Promising therapeutic target for three parasitic diseases
シャーガス病、リーシュマニア症、睡眠病のそれぞれを引き起こす寄生虫をマウスの体内から除去できる薬物候補について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、こうした複数の顧みられない病気(年間死者数の合計が5万人超)を1種類の薬剤で治療できる可能性が示唆されている。
シャーガス病、リーシュマニア症、睡眠病の患者は、全世界に2000万人おり、主にラテンアメリカ、アジア、アフリカの低所得者コミュニティーの住民だ。この3種の疾患は3種の類似した寄生虫を原因としているため、Frantisek Supekたちの研究グループは、1種類の薬物の標的となる共通のタンパク質の同定を目指した。そして、Supekたちは、300万点以上の薬物候補の中から1つの有望な化合物を同定し、その化学構造をさらに精密化して作用強度と生物学的利用能を増強した。
この薬物候補GNF6702は、これら3種の疾患のマウスモデルでの試験結果が良好で、寄生虫のプロテアソーム(タンパク質調節に関係する小さな構造体)の活性を選択的に阻害することで作用すると考えられている。シャーガス病、リーシュマニア症、睡眠病の治療薬は、それぞれ現存しているが、高価格で、忍容性が低く、有効性も低い。これに対して、今回同定された新しい化合物は、マウスにおける忍容性が高く、哺乳類の細胞の正常な機能を乱さないと考えられている。
doi: 10.1038/nature19339
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