序列を維持する心
Nature Human Behaviour
2017年7月11日
Maintaining the hierarchy
経済的不平等を嫌う人は多いが、そうした人であっても、富む人がより少ない金を受け取り、貧しい人がより多い金を受け取るような再分配が行われて既存の「富の序列」が覆されることを望まないことが、今週のオンライン版に掲載された論文で報告されている。この知見は、階層の維持が、人々にとって不平等な扱いを拒否することに等しい社会規範であることを示唆している。
先行研究では、経済ゲームにおいて人は不平等な支払いを拒否することが報告されており、平等を強く望む心は、文化の違いを越えた社会規範であると示唆されていた。しかし、そうした証拠にもかかわらず、所得の不均衡は依然として解消されておらず、他の要因の関与の可能性が疑われていた。
Xinyue Zhouたちの研究グループは、さまざまな文化を対象に一連の経済ゲームを行い、序列が2人の人間への支払いを等しくしたいという人々の意欲にどれほど影響を及ぼすのかを調べた。その結果、実験参加者の大多数は、序列が全体として変わらないと予想される状況では、富む者から貧しい者へ金を再分配することを選択する(この場合、富む者は貧しくなるものの富んだ状態は変わらず、一方で貧しかった者は当初より富むものの貧しい状態で変わらない)が、大半の参加者は、再分配が2人の序列を逆転させる(つまり富む者が貧しくなって、所有する金額が少なくなる一方で、貧しかった者が富み、所有する金額が多くなる)状況になりそうな場合は再分配を望まないことが判明した。子どもを対象とした同様の実験では、不平等の回避は4歳までには現れるが、〈序列の逆転〉の回避は6歳になるまで現れないことが判明した。この結果は、「平等を求める」という規範が、発達の途上で学習されるものであることを示唆している。
このような研究は、不平等の存続を許容する個人レベルの信念と行動に関する理解を深めると考えられる。
doi: 10.1038/s41562-017-0142
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