注目の論文

【遺伝学】酵母細胞の適応度を大きく損なうことなくその染色体を融合させる

Nature

2018年8月2日

Genetics: Combining yeast chromosomes comes without critically compromising cell fitness

酵母の染色体は通常は16本だが、わずか1本あるいは2本の染色体しか持たない新しい酵母株が作られたことを報告する2編の論文が、今週掲載される。

真核生物のゲノムは、染色体で分割されるが、その数は種によって異なる。例えば、ヒトの染色体は23対、類人猿は24対であるのに対し、雄のトビキバハリアリは1対しか持っていない。こうした種差の原因は、偶発的なテロメア融合やゲノム重複事象である可能性が非常に高いのだが、染色体が複数あることの利点、そして染色体の総数の変化に対する生物種の耐性については解明されていない。

これら2編の論文の著者は、CRISPR-Cas9技術を用いて、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のゲノムを編集して新しい酵母株を作製し、その都度、染色体の数を徐々に減らしていった。Zhongjun Qinたちの研究グループは、全ての遺伝情報が1本の染色体に統合された新しい酵母株を作製し、Jef Boekeたちの研究グループは、独自に2本の染色体を有する酵母株を作製した。v

融合が起こると染色体の3次元構造が大きく変化するが、これらの新しい酵母株は、わずかな数の非必須遺伝子の欠失を除けば、正常なS. cerevisiaeと同じ遺伝物質を含んでいる。これらの修飾された酵母細胞は、予想外にロバストで、さまざまな条件下で培養しても重大な増殖異常は起こらなかった。しかし、融合した染色体を持つ酵母株は、適応度がわずかに損なわれており、有性生殖に欠陥があるため、修飾されていない酵母株との競争ですぐに敗れる可能性がある。以上の研究知見は、染色体の数が多いことの利点を説明する第1歩になるかもしれない。

doi: 10.1038/s41586-018-0374-x

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