【生態学】オーストラリアの河川食物網から医薬品が見つかった
Nature Communications
2018年11月7日
Ecology: Pharmaceuticals appear in Australian river food webs
オーストラリアのメルボルン近くの6カ所の小河川で、水生無脊椎動物と河岸に生息するクモ類から60種以上の医薬品が検出されたことを報告する論文が、今週掲載される。著者たちは、クモが無脊椎動物を摂取した時にこうした医薬品が体内に入り込んだという考えを示している。また、予備的推定から、小河川の食物網の頂点に位置するカモノハシやブラウントラウトは食餌で特定の薬剤にさらされ、原理的にはその量が、ヒトの患者に処方される用量の最大50%に達する可能性のあることが示唆されている。
ヒトが日常的に使用する化学物質(医薬品、パーソナルケア製品など)は、汚水処理では効果的に除去されないため、近くの河川の流域に残留する。しかし、そのような化学物質の生物活性、曝露、および生態学的影響についてはほとんど分かっていない。
今回、Erinn Richmondたちの研究グループは、メルボルンの近くを流れる6カ所の小河川で水生昆虫と陸生クモ類を調べて、98種の医薬品(抗うつ剤、鎮痛剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤など)の濃度を測定した。その結果、水生昆虫とクモ類の両方で、60種以上の化学物質が検出可能な濃度に達していたことが判明した。この濃度は、水生昆虫の捕食者として知られる水辺に生息するクモ類の方がかなり高かったため、これらの化学物質の「生物濃縮」が起こり、食物連鎖の上層において化学物質の濃度が上昇したことが示唆された。
次にRichmondたちは、水生昆虫の体内に含まれる化学物質の濃度に関する情報を使って、食物網に含まれるその他の昆虫捕食者であるブラウントラウトとカモノハシの医薬品への曝露を推定した。Richmondたちは自らの計算結果を基に、カモノハシが、ヒトでの推奨用量の約50%相当の抗うつ剤を摂取している可能性のあることを示している。
今回新たに発見された水中汚染物質の直接的効果を探究するためには、さらなる研究が必要である。
doi: 10.1038/s41467-018-06822-w
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