【遺伝学】最大規模の2型糖尿病エキソーム塩基配列解読
Nature
2019年5月23日
Genetics: Type 2 diabetes exome sequencing goes large
これまでで最大規模の2型糖尿病患者と対照者のエキソーム配列の解析により、2型糖尿病に関連するまれなバリアント(低頻度バリアント)が同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。エキソーム塩基配列解読は、ゲノム中の2型糖尿病の発症に関わっている可能性のあるタンパク質コード領域を突き止めるために用いられる。今回の知見は、2型糖尿病の特徴を解明する方法と治療法を開発するための方法の改善に役立つ可能性がある。
エキソームは、ゲノムの中で機能的なタンパク質がコードされた部分である。タンパク質の機能や疾患に強い影響を与えるバリアントは、疾患のリスクにおいて特定の遺伝子が果たす役割に関する手掛かりとなる場合がある。こうしたバリアントはまれである可能性が高く、ゲノム規模関連解析による検出が困難と予想されている。エキソーム塩基配列解読は検出力を高めると期待されてきたが、2型糖尿病などの複合疾患でまれなバリアントと有意な関連が見いだされることは比較的少なく、その一因は標本サイズが小さいことにあると考えられている。
今回、Jason Flannickたちの研究グループは、5つの祖先集団の2型糖尿病患者群2万791人と対照群2万4440人を対象としたエキソーム塩基配列解読について報告している。これは、エキソーム配列が解読された2型糖尿病症例の解析としても、特定の疾患症例の解析としても、これまでで最大規模のものである(これまでの最大標本サイズは1万症例未満)。今回の解析では、まれなバリアントの遺伝子レベルの関連が新たに特定され、確立された2型糖尿病の遺伝子標的において大きな効果量を有するまれなバリアントの有意な関連を検出するためには約7万5000~18万5000症例が必要と考えられることが示された。今回の結果は、複合疾患の理解を進める上で、ゲノム規模関連解析と共にエキソーム塩基配列解読を行うことが有益であることを実証している。
doi: 10.1038/s41586-019-1231-2
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