注目の論文

【進化】中新世の「ネズミ」の移動の手掛かりとなる歯の化石

Scientific Reports

2019年8月30日

Evolution: Ancient teeth shed light on Miocene ‘mouse’ migration

先史時代のネズミ亜科動物(マウス、ラットやその近縁種が含まれる哺乳類の分類群)の新種が、レバノンで発見された化石から同定された。この新知見は、ネズミ亜科動物の最初のアジアからアフリカへの分散がレバント地方を経由したものだったことを示す初めての物理的証拠である。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。

哺乳類の最大の亜科であるネズミ亜科は、1600万年前に南アジアで出現したと考えられている。しかし、ネズミ亜科動物が最初に分散した時期と経路に関する仮説は明確に示されていなかった。

今回、Raquel Lopez-Antonanzasたちは、2013年と2018年にレバノンで発掘された歯の化石を分析して、これまでに発見されていなかった種の歯であることを明らかにし、この新種をProgonomys manoloと名付けている。Lopez-Antonanzasたちは、P. manoloが約1100万~1050万年前に生息していたProgonomys属の最も古い種に形態学的に類似していると考えており、このことからP. manoloは、Progonomys属の最も原始的な種の1つだったと示唆される。Progonomys属は、ネズミ亜科動物が出現したと考えられている南アジアから最初に分散したネズミ亜科動物である。

レバノンがアフリカ大陸に近いことを考えると、後にアフリカに定着したProgonomys属集団の祖先がP. manoloである可能性が高いとLopez-Antonanzasたちは考えている。

Progonomys属のさまざまな種の歯の分析が行われた結果、歯が進化の過程を通じて変化したことも明らかになった。後期の種の方が臼歯の幅が広く、広食性種の雑食性食餌から狭食性種の草食性食餌への移行が示唆された。これは、温暖湿潤だった中新世中期から乾燥の進んだ中新世後期への移行に関連している。

以上の新知見は、アラビア半島におけるProgonomys属の最初の記録であり、ユーラシア大陸とアフリカ大陸をつなぐ「レバント回廊」の重要性を高め、ネズミ亜科の最古の大陸間分散についてさらに詳しい情報をもたらしている。

doi: 10.1038/s41598-019-47894-y

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