【代謝】高齢マウスでは、栄養状態の記憶の影響が、食餌制限による利益を相殺する
Nature Metabolism
2019年10月22日
A nutritional memory effect counteracts the benefits of dietary restriction in old mice
一生の後半になって食餌制限を行っても、マウスの寿命は延びないということを報告する論文が掲載される。この知見は、後になって健康的な食餌に適応しても、制限を加えないそれまでの食餌によって生じた損傷を元に戻せないことを示唆している。これらの知見が、ヒトにも当てはまるかどうかは、まだ分からない。
食餌制限を一生にわたって行う(カロリー摂取量を通常の20~40%減にする)と、健康に良い影響があり、寿命が延びることが多くの動物でよく知られている。しかし、食餌制限を一生の比較的遅い時期に開始した場合に効果があるのかどうかは分かっていなかった。
今回、Linda Partridgeたちは、24月齢の雌のマウス800匹で食餌制限の効果を調べた。マウスの一部は、制限しない自由食から食餌制限へと切り替え、一部はその逆を行った。食餌制限から制限なしに切り替えたマウスは、すぐに不健康になり、食餌制限をそのまま続けたマウスよりも早く死んだ。しかし、食餌制限なしから食餌制限に切り替えたマウスは、そのまま食餌制限なしを続けたマウスに比べて健康ではあったものの、長生きはしなかった。著者たちは、一生のほとんどの期間、制限されずに食物を摂取できていたマウスでは、食餌制限に対する脂肪組織での分子レベルの応答が違っていることを見いたした。著者たちは、脂肪組織に「栄養状態の記憶」が刻まれていて、これが食餌制限の健康や生存に及ぼす効能を抑制するのだろうと述べている。
この研究は、遅く始めた食餌制限の効能をマウスで詳しく調べたものだが、ここで提案した「栄養状態の記憶」の基盤となる分子機構がヒトにも当てはまるかどうかは、まだこれから確かめる必要があると、著者たちは強調している。
doi: 10.1038/s42255-019-0121-0
注目の論文
-
4月2日
農業:家畜における抗生物質の使用量の増加を予測Nature Communications
-
4月1日
神経科学:麻痺患者のためのリアルタイムで思考を音声に変換する装置の開発Nature Neuroscience
-
4月1日
健康:アルツハイマー病における認知機能低下のバイオマーカーNature Medicine
-
3月27日
医学研究:ブタから人間への肝臓移植の評価Nature
-
3月25日
神経科学:マラソンランナーは脳内のミエリンの可逆的な変化を経験するNature Metabolism
-
3月25日
加齢:健康的な加齢のための食事パターンの特定Nature Medicine