注目の論文

遺伝学:gnomADプロジェクトによるゲノム解釈の向上

Nature

2020年5月28日

Genetics: gnomAD project improves the interpretation of genomes

ゲノムデータを集約したデータベースであるGenome Aggregation Database(gnomAD)に、ヒトの遺伝的バリアントの公開カタログとして現在知られている最大のものが登録された。このカタログは、ヒトの遺伝子の機能に関する理解を深め、新たな疾患関連遺伝子を発見するための情報源となる。このデータセットは、14万人以上の協力者のサンプルから収集されたもので、このほど、このデータセットの適用について記述された論文が、NatureNature Communications、Nature Medicine に掲載される。

ヒトゲノムを構成する遺伝子の大部分は、機能が明らかになっていない。遺伝子の機能を探索する方法の1つは、変異によって遺伝子の機能が破壊された時に何が起こるかを観察することである。こうした遺伝的バリアントは通常、有害な結果をもたらすことが多く、その発生頻度は非常に低い。大規模な遺伝子の塩基配列解読研究は、この機能喪失型バリアントの影響を調べる機会であり、その結果、ヒトの生物学的特性と疾患に関する重要な手掛かりが得られる可能性がある。

Nature に掲載される概括論文で、Konrad Karczewskiたちは、全エキソーム塩基配列解読データセット12万5748件と全ゲノム塩基配列解読データセット1万5708件から予測される機能喪失バリアント44万3769種のカタログを提示している。Karczewskiたちは、正常な機能を阻害するタンパク質を産生すると予測されるこれらのバリアントが、生理的には全く(ほとんど)影響を及ぼさないのか、あるいは重篤な健康問題を引き起こすのかを評価した。また、Nature に掲載される別の2編の論文では、このデータセットを用いて、構造バリアントに関する情報源が構築され、遺伝子の欠失、重複や逆位の影響が評価されている。

今回の一連の論文では他に、ヒトの機能喪失バリアントを用いて、薬物標的候補を評価した論文、遺伝的バリアントの臨床解釈を向上させた論文、特定の機能喪失バリアントをより詳細に研究できることを明らかにした論文が掲載される。例えば、Nature Medicine に掲載される論文では、Nicola Whiffinたちが、パーキンソン病のリスク上昇に関連する遺伝子のバリアントを分析し、この遺伝子を標的とすることが安全な治療選択肢となる可能性を示している。

gnomADプロジェクトによって収集されたサンプルのサイズは、その先行プロジェクトExome Aggregation Consortium(ExAC)による6万例以上のエキソームの集約と比べると2倍以上である。Karczewskiらは、ヒトの予測される機能喪失バリアントの全てを突き止めるという目標には遠く及ばないものの、今回公開されたバリアントのカタログが、希少な遺伝病と一般的な遺伝病の評価を向上させる機会になるという見方を示している。

doi: 10.1038/s41586-020-2308-7

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