注目の論文

古生物学:骨太の有袋類の化石から明らかになったウォンバットの穴掘り行動の進化

Scientific Reports

2020年6月26日

Palaeontology: Big-boned marsupial unearths evolution of wombat burrowing behaviour

古代有袋類の新種が発見され、Mukupirna nambensisと命名されたことを報告する論文が、今週、Scientific Reports に掲載される。この化石標本は、これまでに発見されたオーストラリアの有袋類の化石標本の中で最も古いものの1つであり、その解剖学的特徴は、現生のウォンバットの進化とその特徴的な穴掘り行動についての理解を深める。

Robin Beckたちは今回の論文で、南オーストラリア州のエア湖盆地で出土した頭蓋骨と部分骨格の化石について記述している。この化石は、約2500万~2600万年前の漸新世後期のもので、ウォンバット亜目の新種とされる。ウォンバット亜目は、かつて有袋類の中で最も多様な進化群の1つだったが、現生種は、3種のウォンバットとコアラだけになった。Beckたちが名付けたMukupirnaという名称は、エア湖の周辺地域で話されているディヤリ語のmuku(「骨」)とpirna(「大きい」)に由来している。この化石動物の体重は、143~171キログラムと推定されており、現生のウォンバット種の約5倍だ。

この骨格化石については、穴掘り行動をしていたことを示す数々の解剖学的特徴が明らかになった。その一例が、穿孔動物に一般的に見られる前肢の適応だ。しかし、これまでに発見されて、より最近のものと年代決定された化石からは、Mukupirnaが、後の時代の近縁種ほど穴掘りに適応していなかったことが示唆される。Beckたちは、この点と体のサイズを考慮して、Mukupirnaは、現生のウォンバットに見られるような真の穴掘り行動はできなかったが、地面を引っかいて地下にある食物(根茎、塊茎など)を掘り出していた可能性があるという考えを示している。現生のウォンバット種のもう1つの適応特性は、連続的に成長する特殊化した臼歯だが、Mukupirnaにはそれもなく、ウォンバットの進化において、骨格の穴掘り行動への解剖学的適応は歯の変化より先に起こったことが示唆される。

doi: 10.1038/s41598-020-66425-8

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