生態学:淡水生態系の健全性にとって非常に重要な腐肉食性のカメ
Scientific Reports
2020年9月18日
Ecology: Turtle scavenging critical to freshwater ecosystem health
オーストラリアで発見された脆弱な淡水性のカメ種Emydura macquariiの研究から、このカメが、魚の死骸をあさることで河川系の水質を制御する役割を果たしている可能性のあることが示唆された。この知見を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
コイは、オーストラリアの多くの地域で有害生物とされ、その死骸が分解して生じる副産物であるアンモニアは、高濃度になると動物に対して毒性を示す。今回、Ricky-John Spencerたちの研究チームは、ホークスビュー環礁で捕獲された雄のE. macquariiを4匹ずつ5グループに分けて用い、コイの死骸を入れた人工湿地の水質に腐肉食性のカメが及ぼす影響を測定した。それぞれの人口湿地には、流水を満たしたタンク、カメが日光浴をするためのセメントブロック、隠れ場所としてのプラスチック製トンネルを入れ、そこに4匹のカメを入れたものと入れないものを設定した。コイの死骸は、カメに食べ尽くされるか、完全に分解してしまうまで人工湿地に放置された。カメを入れた人工湿地では、コイの死骸が3倍速く除去され、アンモニア濃度の低下と溶存酸素濃度の回復に示されるように、水質がより早く初期の状態に戻った。水生動物は、呼吸するために溶存酸素を必要とする。
マレー・ダーリング集水域は、オーストラリアの農業生産の40%を支える河川系であり、280万人以上の住民の主たる水源でもある。マレー・ダーリング集水域に生息する淡水ガメは非常に少なく、その原因は、路上死とキツネによる巣の破壊にある。コイの死骸を食べるカメが少なくなっているため、オーストラリア政府は天然のコイウイルスを導入して侵入種のコイを減らす計画を立てているが、Spencerたちは、この計画によってマレー・ダーリング集水域の水質と生態系が深刻な影響を受ける可能性があるという見解を示している。
doi: 10.1038/s41598-020-71544-3
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