動物学:「押しつぶされない」コブゴミムシダマシの秘密
Nature
2020年10月22日
Zoology: Secrets of the ‘uncrushable’ diabolical ironclad beetle
コブゴミムシダマシの外骨格がこれほどまでに強くなった理由に関して新たな知見を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この知見は、コブゴミムシダマシの巨大な圧縮破壊力に耐える能力を説明するために役立つものであり、建築や、航空学などの工学分野に応用できるかもしれない。
コブゴミムシダマシ(Phloeodes diabolicus)は、オークの木に生息する種で、主に北米の西海岸で見られる。この昆虫は、飛行して危険から逃れる能力はないが、圧縮破壊力に耐える外骨格の前翅(「鞘翅」と呼ばれる)を持つため、捕食者の圧縮破壊攻撃や穿孔攻撃に耐え、車にひかれても生き残れることができる。またこの強度のために、コブゴミムシダマシに標準的な鋼鉄製のピンを突き刺して標本箱に整理することが、昆虫学者たちにとって課題となっている。
今回、David Kisailusたちの研究チームは、コブゴミムシダマシが最大149ニュートン(体重の約3万9000倍)の力に耐えることを明らかにし、それを可能する鞘翅の構造的特徴と材質の組成について報告している。Kisailusたちは、高度な電子顕微鏡観察、分光測定と力学的試験を行って、鞘翅の中央部にジグソーピースの形状でかみ合った接合部が連なっていることを観察し、こうした接合部の幾何学的形状と微細な積層構造が、外骨格の優れた機械的なかみ合いと高靭性化をもたらしたことを明らかにした。
Kisailusたちは、この幾何学的構造について、航空宇宙産業のタービンに求められるような異種材料(例えば、プラスチックと金属)を接合する頑強なメカニカルファスナーとしての可能性を検証するために、コブゴミムシダマシにおいて観察された構造を模倣した金属複合材からなる一連の接合材を作製した。Kisailusたちが設計した接合材は、一般的に用いられる工業用接合材と比較して、強度が向上し、靭性も著しく高かった。
doi: 10.1038/s41586-020-2813-8
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