考古学:先史時代のジェベル・サハバでの暴力行為は一度だけではなかったらしい
Scientific Reports
2021年5月28日
Archaeology: Prehistoric violence at Jebel Sahaba may not have been single event
ジェベル・サハバ(Jebel Sahaba)墓地は、スーダンにある先史時代(1万3400年前)の墓地遺跡で、人間の戦いがあったことを示す最古の遺跡の1つである。このほど、ジェベル・サハバの再分析が行われ、狩猟漁労採集民が小規模な紛争を繰り返していたことが示唆された。この知見について報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。これまでは、ジェベル・サハバで一度の戦いがあり、死者が出たと考えられていたが、このほど、この墓地で発掘された人骨から外傷の治癒痕が見つかり、人々は複数回の戦いに関与し、暴力的な攻撃を生き延びたことが示された。
今回、Isabelle Crevecoeur、Daniel Antoineたちの研究チームは、新しい顕微鏡技術を用いて、1960年代に発掘された61体の遺骨の再分析を行って、これまでに記録されていない106の病変と外傷を特定し、これらを飛び道具(矢や槍)による負傷、接近戦による外傷、自然崩壊に関連する痕跡に分類した。発掘された61体のうち41体(67%)には1種類以上の治癒した傷や治癒していない傷があった。そのうちの92%には、飛び道具や接近戦による外傷が原因であることを示す証拠が見つかり、対人暴力行為があったことが示唆された。
Crevecoeurたちは、治癒した傷の数が、後期更新世(12万6000~1万1700年前)の末期にナイル河谷に住みついていた集団の間で起こった散発的かつ反復的で、常に死者が出るわけではなかった暴力行為と符合しているという考えを示している。Crevecoeurたちは、こうした暴力行為は、異なるグループ間で繰り返された小競り合いや襲撃だった可能性があると推測している。また、傷の少なくとも半数は、槍や矢のような飛び道具による刺創であることが確認された。これは、これらの傷が集団内の紛争におけるものではなく、集団が遠くから攻撃を受けた際に生じたというCrevecoeurらの仮説を裏付けている。
doi: 10.1038/s41598-021-89386-y
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