考古学:アラビア半島への初期人類の移動に水文気候変動が関係していた
Nature
2021年9月2日
Archaeology: Early human migrations into Arabia associated with hydro-climatic variability
初期人類は、過去40万年間に少なくとも5回の移動期でアラビアに足を踏み入れていたことを報告する論文が、Nature に掲載される。アラビアの砂漠で発見された一連の石器と動物化石が、こうした初期人類の移動の証拠となっており、それぞれの移動は、一時的に乾燥度が低下した期間と関係していた。
アラビア半島の広大な乾燥地帯は、アフリカとユーラシアを結ぶ唯一の陸橋であるため、アフリカ大陸から外界へ移動し、アフリカ大陸に戻ってきたヒト族(ホモ・サピエンスと現生人類の近縁絶滅種)の進化に関する研究の焦点になっていた。このようにアラビアが重要であるにもかかわらず、この地域で発見された文化的記録、生物学的記録、環境的記録は限られており、ヒト族の人口動態と行動に関する我々の理解は十分でない。
今回の論文で、Huw Groucutt、Michael Petragliaたちは、サウジアラビア文化省遺産委員会との共同研究で、サウジアラビア北部のネフド砂漠にかつて存在していた湖の付近の堆積層から発見された一連の石器と動物化石について報告している。これらの発見物の中には、これまでで最古のヒト族のアラビアでの居住記録に関連する人工産物も含まれており、更新世(約260万~1万1700年前)に初期のヒト族のアラビアへの分散は少なくとも5回起こったことが明らかになった。これらの移動期は、それぞれ、環境条件が有利な時期、つまり一時的に乾燥度が低下した時期(約40万年前、30万年前、20万年前、13万~7万5000年前、5万5000年前)と一致していた。これらの移動期は、物質文化の違いによっても分類することができ、2回の移動期にはアシュールの技術(一般にホモ・エレクトスのような初期のヒト族種に関連している)が含まれ、3回の移動期には、中期旧石器時代の技術のそれぞれ独自の形態(手斧や大包丁など)が含まれていた。以上の知見は、アラビアに多様なヒト族集団が移住し、この集団が複数のヒト族種によって構成されていた可能性があることを示唆している。
Groucuttたちは、これらの発見物は、アフリカとユーラシアの連結点におけるヒト族の移動に関する理解を深める上でアラビアが重要なことを裏付けるだけでなく、より具体的には、初期人類集団間の相互作用が著しい環境的変化と生態学的変化の時期にどのように関連していたのかを明らかにするものだと結論付けている。
doi: 10.1038/s41586-021-03863-y
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