古生物学:未知のヒト族の個体と結び付けられた古代の連続した足跡
Nature
2021年12月2日
Palaeontology: Ancient footprints linked to an unknown hominin
タンザニア北部のラエトリ遺跡で発見された行跡(連続した足跡)の化石を再分析したところ、約360万年前に複数のヒト族種が二足歩行していたことが示唆された。これまでの研究で、1組の行跡化石が現生人類の初期の近縁種のものと特定されているが、今週のNature に掲載される論文では、別の1組の行跡化石が未知のヒト族種に帰属することが示唆されている。今回の知見は、二足歩行の起源についての新たな手掛かりとなる。
1970年代にラエトリ遺跡で発見された5つの連続した行跡化石は、ヒト族の二足歩行を示す最古の決定的な証拠だ。これらの行跡化石は、有名な「ルーシー」の骨格化石の場合と同じく、アウストラロピテクス・アファレンシス(Australopithecus afarensis)のものだとする学説が提起された。同時期に別の行跡化石も発見されていたが、その後埋められてしまい、議論を呼んだ。クマが後肢で歩いた行跡だったという考え方があり、別のヒト族種の行跡とする考え方もあった。
2019年になって、Ellison McNuttたちは、このような一風変わった形状の行跡を再び発掘した。McNuttたちは、これをクマ、チンパンジー、ヒトの行跡と比較し、クマよりもヒトの行跡に近いことを明らかにした。また、野生のアメリカグマの行動を映像で分析したところ、アメリカグマが後肢で歩くことはほとんどないことが分かった。McNuttたちは、ラエトリで数千点の動物の化石が発見されているが、いずれもクマのものではないことも明らかにした。McNuttたちは、これが、いまだに特定されていないヒト族種の行跡で、このヒト族の個体が、変わった歩き方(一方の足が体の正中線を横切って、もう一方の足の前方に着地するクロスステップという歩行)をしていたと結論付けた。
この時代のヒト族の多様性が過小評価されていることを示唆する証拠が増えており、今回の知見もその1つとなった。
doi: 10.1038/s41586-021-04187-7
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