注目の論文

動物学:高速で飛翔する小型甲虫の秘密

Nature

2022年1月20日

Zoology: Secrets of a miniature beetle’s speedy flight

世界最小の昆虫の1つである鞘翅目ハネカクシ上科ムクゲキノコムシ科昆虫が優れた飛翔性能を発揮するのは、独特の飛翔様式と軽量のふさ状の翅のためである可能性を明らかにした論文が、Nature に掲載される。この知見は、小型スケールでの飛翔の進化に関する理解を深める上で重要だ。

昆虫の飛翔速度は、一般に体サイズによって決まり、大きな昆虫ほど速く飛べる。こうした違いが生じる原因は、空気摩擦による制約とするのが通例で、非常に小さいスケールでは、通常、この制約が飛翔力を上回っている。しかし、一部の小型昆虫は、この法則に反しているように見える。その一例が、鞘翅目ハネカクシ上科ムクゲキノコムシ科のParatuposa placentis で、その体サイズは1ミリメートルの半分にも満たない(395マイクロメートル)が、体長が3倍の昆虫と同じ速度で飛ぶことができる。

今回、Alexey Polilovたちは、P. placentis の翅の構造と動きの3D再構成を統合した。その結果、この甲虫はふさ状の翅を持っており、それが同じサイズの膜状の翅よりも軽量であるだけでなく、これまで知られていなかった動き方をすることが明らかになった。この甲虫の羽ばたきサイクルは、2回の翅の打ち下ろしで大きな上向きの力を生成し、その後、2回のゆっくりとした打ち上げで小さな下向きの力を生成するというもので、このサイクルによって羽ばたきの振幅が増加する。翅鞘(硬くなった前翅)は、胴体の過度な振動を抑制するブレーキとして機能する。また、ふさ状の翅は、より重い膜状の翅に必要とされるほどの筋力を必要としないと考えられるため、Polilovたちは、この独特な動きのサイクルに必要な筋力量の増加分が相殺されるという考えを示している。

Polilovたちは、このような適応は、小型昆虫が小型化する過程においてこのような優れた飛翔性能が維持された過程を説明でき、この適応が、小型昆虫の進化的成功の重要な要素となっている可能性があると結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-021-04303-7

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