免疫学:ファイザー-ビオンテック製ワクチンと中国シノバック製CoronaVacワクチン接種のオミクロン株に対する効力
Nature Medicine
2022年1月20日
Immunology: Efficacy of Pfizer–BioNTech or CoronaVac vaccination against Omicron assessed
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する中国シノバック製不活化ウイルスワクチン(CoronaVac)もしくはファイザー-ビオンテック製mRNAワクチン(BNT162b2)のどちらかをまず2回接種してから、ファイザー-ビオンテック製ワクチンのブースター接種を行うと、オミクロン株に対する防御効果が生じることが、Nature Medicine に掲載される2つの論文で明らかにされている。
D Hui、M Peirisたち(香港大学および香港中文大学)は、SARS-CoV-2の野生株とオミクロン株への感染に対する抗体応答の違いを、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの回復者(30人、平均年齢48.9歳)とワクチン既接種者で調べた。このワクチン既接種者の構成は、ファイザー-ビオンテック製mRNAワクチンの2回の接種完了後1か月が経過した未感染者(31人、平均年齢51.7歳)、CoronaVacワクチンの2回接種完了後1か月が経過した未感染者(30人、平均年齢52.1歳)、CoronaVacワクチン2回接種後に同じワクチンのブースター接種を1回受けた被験者(30人、平均年齢50.5歳)、それにファイザー-ビオンテック製ワクチンの接種を3回完了した被験者(25人、平均年齢50.6歳)である。
著者たちによれば、ファイザー-ビオンテック製ワクチン、もしくはCoronaVacワクチンのどちらかを2回接種した場合は、その1か月後でもオミクロン株感染に対する中和抗体免疫はほとんど検出されないことが分かった。しかし、これらのワクチンのどちらかを2回接種後にファイザー-ビオンテック製ワクチンをブースター接種すると、ブースター接種の1か月後の時点で、許容範囲の免疫(SARS-CoV-2に対して50%以上の防御効果をもたらすのに十分な抗体レベルと定義されている)が得られた。ファイザー-ビオンテック製ワクチンの3回接種では、オミクロン株に対する平均の中和抗体価は、CoronaVacワクチンの2回接種に加えてファイザー-ビオンテック製ワクチンのブースター接種をした場合に比べて約3分の1高かった。しかし、CoronVacワクチンの3回接種では、オミクロン株に対する十分な中和抗体応答は生じなかった。
もう1つの論文では、岩崎明子(エール大学)たちが、3回接種方式の有効性について論じている。これは、CoronaVacワクチンを2回接種してから最短で4週間後にファイザー-ビオンテック製ワクチンのブースター接種を行うというもので、デルタ株とオミクロン株に対する効果がドミニカ共和国の101人の被験者(女性が70%、平均年齢40.4歳)で調べられている。
この組み合わせのワクチン接種を受けた被験者では、祖先にあたる最初に見つかったSARS-CoV-2株とデルタ株の両方に対するウイルス特異的抗体レベルが、mRNAワクチンのブースター接種をする前に比べて上昇し、強力な中和抗体応答が見られた。CoronaVacワクチンの接種を2回受けただけの被験者では、オミクロン株に対する中和応答は検出できなかったが、ファイザー-ビオンテック製ワクチンのブースター接種を行った場合には、オミクロン株に対する抗体による中和活性が、ファイザー-ビオンテック製ワクチンもしくはモデルナ製ワクチンの2回接種を受けた被験者の1.4倍に上昇した。
しかし、この上昇にもかかわらず、オミクロン株に対する中和抗体のレベルは、祖先にあたるSARS-CoV-2株に対する抗体レベルに比べると15%以下に、デルタ株に対する抗体レベルに比べると30%以下に低下していた。この混合方式のワクチン接種を受けた被験者では、過去にSARS-CoV-2に感染していても、オミクロン株に対する抗体レベルの著しい上昇が見られなかったことは、注目すべきである。
これらの知見は、オミクロン株がワクチン接種や感染によって誘導された免疫を回避する能力をもつことをさらに明確に示しており、SARS-CoV-2の新しい変異株の出現と闘うためにはブースターワクチン接種が世界的に重要であることを著者たちは強調している。
doi: 10.1038/s41591-022-01704-7
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