ヒトの進化:ヒト族の居住地分布は古代の気候と結び付いていた
Nature
2022年4月14日
Human evolution: Hominin distribution linked to ancient climate
過去200万年間のヒト族種の居住地の分布は、地球の気候の変化に大きく影響されていたことを明らかにした論文が、Nature に掲載される。今回の研究は、広範なデータ情報資源を利用しており、ヒトの進化の歴史に関する重要な知見をもたらしている。
過去500万年の間に、地球の気候は、鮮新世(530万~260万年前)の温暖湿潤気候から更新世(260万~1万年前)の寒冷乾燥気候へと移行した。これと同時期に、地球が太陽を周回する軌道の変化(いわゆる「ミランコビッチ・サイクル」)が地球の気候に影響を及ぼしたため、現代の科学者は、天文学的に強制された気候変動と人類の祖先の移動との関連性を論じるようになった。しかし、この関連性を証明するために必要な総合的な古気候データセットが不足している。
今回、Axel Timmermannたちは、新たなモデル化研究のデータを化石解析と考古学的解析と組み合わせて、5つのヒト族種(ホモ・ハイデルベルゲンシス、ホモ・サピエンス、ホモ・エレクトスなど)の過去200万年間の移動を調べた。その結果、天文学的に強制された気温、降水量、陸上の純一次生産(1年間に植物に捕捉された炭素の正味量の指標)の変化が、ヒト族の居住地の分布とヒト族の分散に大きな影響を及ぼし、ヒト族の多様化に対しても大きな影響を与えた可能性があったことが明らかになった。ヒト族は、更新世初期には気候変動性の弱い環境に定住したが、更新世の終わりに近づくと、世界各地で放浪するようになり、広範な気候条件に適応した。また、30万~40万年前にアフリカ南部とユーラシアで起こった気候崩壊は、ホモ・ハイデルベルゲンシス集団からホモ・サピエンス集団とネアンデルタール人集団への進化的形態変化の一因になったと考えられている。
doi: 10.1038/s41586-022-04600-9
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