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人類学:ミラノの住民の平均身長はローマ時代から変わっていないかもしれない

Scientific Reports

2023年2月24日

Anthropology: Height in Milan may not have changed since the Roman Era

ローマ時代から20世紀までにイタリアのミラノで埋葬された500人以上の遺骨の分析が行われ、ミラノの住民の平均身長が過去2000年間ほとんど変化していなかったことが示唆された。どの時代にも身長の個人差が見られたのに対し、さまざまな時代の平均身長の比較では、男女とも有意差が認められなかったのだ。今回の研究について報告した論文が、Scientific Reportsに掲載される。

ヒトの身長は、遺伝や環境の影響によって決定され、ヒト集団の健康や社会的動態の指標として用いられることが多い。今回、Mirko Mattiaたちは、過去約2,000年の間にミラノに埋葬された男女(計549人)の遺骨を分析した。この分析では、ローマ時代(紀元1~5世紀)、中世初期(6~10世紀)、中世後期(11~15世紀)、近代(16~18世紀)、現代(19~20世紀)の時代区分が用いられた。また、これらの遺骨は、裕福でない人々のものであったことが、墓から見つかった物品や埋葬地の史料から判明した。

全体として、男性の身長は152.0~195.4センチメートルの範囲内にあり、平均身長は168.5センチメートルだった。女性の身長は143.5~177.6センチメートルで、平均身長は157.8センチメートルだった。男性と女性の平均身長は、時代が変わっても安定しており、時代間の有意差は見られなかった。

Mattiaたちは、ミラノ市の住民の身長が時代を経ても安定している傾向は、市民の生活環境が他の地域よりも比較的良好であることに関連しているという考えを示している。また、Mattiaたちは、同市が天然資源と食料資源に恵まれていたことが記録によって示唆され、同市の城壁が潜在的な脅威に対する防御になっていた点を強調し、今回の研究結果は、ヒト集団の身長が数千年にわたって変化しない珍しい例だと結論付けている。

今回の分析に用いられたヒトの骨格の残骸は、ミラノ大学のCAL(法医人類学・歯科法医学研究所の人類学コレクション)の一部であり、新設されたMUSA(人権のための人類学・医学・法医科学の大学博物館)に展示されている。

doi: 10.1038/s41598-023-28406-5

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