注目の論文

動物行動学:半野生アカゲザル個体群における同性間性行動

Nature Ecology & Evolution

2023年7月11日

Animal behaviour: Same-sex sexual behaviour in a semi-wild population of rhesus macaques

同性間性行動は、半野生のアカゲザルの個体群で頻繁に見られ、進化してきたものであることを報告する論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。今回の知見は、3年にわたる観察データに基づいており、この行動が適応度コストを生じないことも指摘している。

同性間性行動が記録されている動物種は多い。しかし、その観察は場当たり的なものである傾向があり、同性間性行動は一般に、異性間性行動よりもまれなものとして記述される。これは、同性間性行動の多様性、特にその行動が遺伝的なものか、そして進化的過程によって駆動され得るかという点が、あまり理解されていないことを意味している。

Vincent Savolainenらは、プエルトリコのカヨ・サンティアゴという島の半野生アカゲザルに関して、長期の個体群統計記録がある個体群の行動を調べた。調査では、2017~2020年の間に、雄のアカゲザル236頭でマウンティング行動が観察された。マウンティングは異性間よりも同性間の観察例が多く、調査した雄の72%が同性間マウンティングを行っていたのに対し、異性間マウンティングを行っていた雄は46%だった。同性間性行動が活発な個体ほど他個体との社会的接触に多くの時間を費やしており、マウンティングのペアは連合体を形成していることが多かった。これまで、同性間性行動と生殖の間のトレードオフが想定されてきたが、今回Savolainenらは、同性間性行動と生殖の間に前向きな傾向を見いだした。また、同性間性行動にはある程度の遺伝性があり(6.4%;長期の血統データを用いて計算)、従って進化する可能性があることも明らかになった。

Savolainenらは、今回の結果を他の個体群や種にまで当てはめることには注意を促すが、このような知見は、「同性間性行動がヒト以外の動物には極めてまれで、あったとしても異常な環境条件の産物に他ならない」という思い込みに疑問を投げ掛けるものだと主張している。

doi: 10.1038/s41559-023-02111-y

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