注目の論文

生物科学:ヒトの臓器の年齢を測定するための血液検査

Nature

2023年12月7日

Biological sciences: A blood test to measure human organ age

ヒトの臓器の加齢を解析する新しい方法によって、疾患リスクと数々の加齢の影響をより正確に予測できることを示唆した論文が、Natureに掲載される。今回の研究では、5000人以上を対象に解析が行われ、そのうちの約20%で1つの臓器の加齢が著しく加速していることが明らかになり、このことが死亡リスクを増加させ、臓器特異的疾患の存在を示唆する可能性が示された。例えば、脳と血管の加齢の進行が速いことは、アルツハイマー病の進行を予測する上で役立つ可能性がある。

加齢は組織の構造劣化と機能低下をもたらし、ほとんどの慢性疾患のリスクを大幅に増加させる。これまでに実施された動物実験で、加齢には個体差があり、同一個体内の臓器間格差もあることが示されている。これがヒトにも当てはまるか、また、加齢関連疾患にも影響が及ぶかについては解明されておらず、ヒトの臓器が加齢とともに分子的にどのように変化するかもほとんど分かっていない。

今回、Tony Wyss-Corayらは、生きている個人のさまざまな臓器の加齢の違いを測定するために、対象の臓器に由来する血漿タンパク質レベルを評価した。今回の研究では、5676人の成人を対象として、その一生を通じた11種類の主要臓器(脳、心臓、腎臓を含む)の加齢を、機械学習モデルを用いて解析した。臓器年齢を推定した結果、参加者の約20%で1つの臓器の加齢が著しく加速しており、全体の1.7%の人々では複数の臓器の加齢が加速していた。臓器の加齢が加速していると、死亡リスクが20~50%増加することが明らかになり、また、臓器の加齢の加速と臓器特異的疾患の関連が示された。心臓の加齢が加速している人は、心不全のリスクが250%高かった。さらに、脳と血管の加齢が加速していることからアルツハイマー病の進行を予測する方法は、現時点で最良のアルツハイマー病の血液診断マーカーであるリン酸化タウ(アルツハイマー病の主要な特徴)と同程度に有効なことも分かった。

doi: 10.1038/s41586-023-06802-1

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