加齢:炎症性タンパク質を阻害するとマウスの寿命が延びる
Nature
2024年7月18日
Ageing: Blocking an inflammatory protein increases lifespan in mice
マウスにおけるIL11と呼ばれる炎症性タンパク質の老化作用を報告する論文が、今週のNatureに掲載される。このタンパク質を阻害すると、老齢マウスの健康状態が改善し、寿命が延びることが示された。ヒトにおけるIL11阻害の効果はまだ不明であるが、線維性肺疾患の患者における、この治療の効果を理解するための初期段階の臨床試験が進行中である。
健康と寿命に関連する生物学的シグナル伝達経路は、高齢になると頻繁に障害され、その結果の一つとして、炎症性シグナル伝達が老化に関与していることがわかっている。Anissa WidjajaとStuart Cookらは、IL11と呼ばれる炎症性サイトカイン(炎症を媒介するシグナル伝達タンパク質)が、マウスの加齢に伴う疾患と寿命にどのような影響を及ぼすかを調べた。その結果、IL11はマウスの加齢に伴って発現量が増加することが判明し、このサイトカインレベルの上昇が加齢に関連するシグナル伝達経路を活性化することが示された。
これらの観察結果を受け、著者らはIL11の活性を阻害することが、マウスの加齢に伴う疾患や寿命にどのような影響を与えるかを調べた。IL11の発現に関連する遺伝子を欠失させると、老年期による代謝の低下、多発性疾患、虚弱から身を守り、雌雄ともに平均24.9%寿命が延びた。IL11を抗体で阻害すると、雌雄両方のマウスで、老化と虚弱の徴候を減少させながら、代謝と筋肉機能を改善した。生後75週(ヒトの55歳に相当)のマウスでは、IL11の阻害により、寿命がオスで22.4%、メスで25%延びた。IL11の阻害は、以前から示唆されていた加齢に伴う癌の発生率も低下させるようである。
これらの知見を総合すると、抗IL11療法は、高齢動物の健康を改善し、寿命を延ばすことができる。これが人間に当てはまるかどうかは、さらなる調査が必要である。
Widjaja, A.A., Lim, WW., Viswanathan, S. et al. Inhibition of IL-11 signalling extends mammalian healthspan and lifespan. Nature (2024).
doi: 10.1038/s41586-024-07701-9
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