注目の論文

健康:気候変動下におけるヨーロッパの気温関連死亡率の調査

Nature Medicine

2025年1月28日

Health: Investigating temperature-related mortality in Europe under climate change

Nature Medicine

気候変動緩和政策が実施されない場合、ヨーロッパの都市部における気温に関連する死亡者数は今世紀末までに最大50%増加し、合計で230万人が新たに死亡する可能性があると報告する論文が、Nature Medicine に掲載される。この調査結果は、ヨーロッパ30か国の854都市のデータをもとにしたモデル予測に基づいている。著者らは、気温上昇による死亡者の増加を防ぐために、より厳格な気候適応策と緩和策を実施するよう求めている。

ヨーロッパでは気温上昇が予想されるため、暑さと寒さによる死亡率のバランスを理解することは重要である。これまでの研究では、ヨーロッパでは暑さによる死亡者1人に対して寒さによる死亡者10人の割合であると報告されているが、気候変動により将来的にこのバランスが変化し、気温による死亡者数が減少する可能性もある。これにより、寒さによる死亡者数は減少する可能性があるにもかかわらず、暑さによる死亡者数が増加するのではないかという懸念が生じる。しかし、これらの研究では、人口の高齢化や気温上昇に対する都市の適応策といった人口統計学的要因の変化は考慮されていない。

Pierre Masselotらは、2015年から2099年までの異なる気候変動、人口統計、および適応策のシナリオを想定し、ヨーロッパの854都市における寒さ、暑さ、および気温による総死亡者数を予測するために、気温と死亡者数のデータを分析した。著者らは、研究者が分析した持続可能な開発の気候変動適応シナリオ(SSP1-2.6;SSP = Shared Socio-Economic Pathway〔共通社会経済経路〕)のもとでも、2060年までにヨーロッパの都市部では気温に関連する死亡者数が純増(人口10万人あたり7.6人)すると計算している。著者らは、この原因を、寒冷関連死の減少を上回る熱関連死の増加にあるとしている。Masselotらは、二酸化炭素排出量が2100年までに2倍になるというSSP3-7.0シナリオのもとでは、2015年から2099年の累積死亡者数は2,345,410人に達すると予測している。しかし、この同じシナリオで気候適応策によりリスクを50%削減した場合、2100年までに予測される気温関連死の総数は268,100人となる。

著者らは、これらの予測は不確実性の高い特定の仮定に基づいていること、また、適応の特定の要因や湿度などの局地的な気候特性を考慮していないこと、また、分析において農村地域を考慮していないことを指摘している。

Masselot, P., Mistry, M.N., Rao, S. et al. Estimating future heat-related and cold-related mortality under climate change, demographic and adaptation scenarios in 854 European cities. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-024-03452-2
 

doi: 10.1038/s41591-024-03452-2

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度