疫学:オミクロン以前と以後のSARS-CoV-2に対する免疫反応
Nature
2025年2月6日
Epidemiology: Immune responses to SARS-CoV-2 before and after Omicron
自然感染によるSARS-CoV-2への繰り返し感染に対する防御効果は、オミクロン変異株の出現後、大幅に低下したことを報告する論文が、Nature に掲載される。オミクロン変異株出現後の防御レベルと免疫持続期間は、オミクロン変異株出現前の両方で低下が観察された。これらの知見は、免疫力を維持するためにワクチンを更新することの重要性を明らかにしている。
SARS-CoV-2は、急速に進化し、感染力が増した変異株を生み出している。2021年後半にオミクロン変異株が出現したことは大きな転換点となった。この変異株は、スパイクタンパク質(ウイルスが細胞に侵入するのを助ける領域)に、これまでの変異株よりも多くの遺伝子変異が認められた。このような急速な進化の変化は、再感染に対する免疫反応の強さに影響を及ぼし、既存のワクチンや治療法の効果を低下させるかもしれない。
ウイルスの進化が自然免疫による防御のレベルと持続期間にどのような影響を与えるかを理解するために、Laith Abu-Raddadらは、カタール在住の個人を対象とした集団全体のデータを調査した。オミクロン変異体以前は、SARS-CoV-2への感染歴は再感染に対する長期かつ効果的な防御と関連していた(感染後1年間の有効性は81.3%、その後は79.5%に低下)。しかし、オミクロン変異体の出現後、自然感染による再感染予防効果は、最初の1年間で59.5%だったが、1年後には4.8%に急速に低下した。著者らは、オミクロン変異体の出現前と出現後の自然感染による予防効果の差異が観察されたことは、ウイルスの進化が免疫回避の必要性によって促進された可能性があることを示唆していると指摘している。
この研究は、ウイルスの進化を監視し、その変化が宿主免疫に及ぼす影響を研究することの価値を示しており、それによって免疫を回復させるためのワクチン更新に関する情報を得ることができると、著者らは結論づけている。
- Article
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- Published: 05 February 2025
Chemaitelly, H., Ayoub, H.H., Coyle, P. et al. Differential protection against SARS-CoV-2 reinfection pre- and post-Omicron. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08511-9
doi: 10.1038/s41586-024-08511-9
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