注目の論文
薬物耽溺と再発を起こす神経変化
Nature Neuroscience
2009年7月14日
Neural changes mediating addiction and relapse
遊びや気晴らしで使っている麻薬(レクリエーショナルドラッグ)が、いつしか強迫的な乱用と再発に推移していく機構は、神経学的にどう説明されるだろうか。Nature Neuroscience(電子版)に掲載される研究によると、コカインは神経結合にある変化を誘発し、その持続性は特定のグルタミン酸受容体のチャネル開閉により調節されることがわかり、この過程がある程度解明された。
コカインなどの依存性薬物は、脳に検出可能な痕跡を残す。特にコカインへの曝露は神経細胞間の結合を変化させ、ほかの神経細胞に送る信号が強まったり弱まったりする。この過程は、薬物性神経可塑性とよばれる。
C Luscherらは、薬物依存の再発モデルマウスの神経活動と行動変化を調べ、報酬処理との関連が示されているVTA(腹側被蓋野)とよばれる中脳の区域でコカイン誘発性シナプス可塑性が持続し、グルタミン酸受容体mGluR1がそれを調節することを発見した。マウスのVTAでmGluR1の活性を操作すると、退薬後のコカイン探索行動に重要だと知られている領域に、早期に永続的なシナプス可塑性が起こった。マウスのVTAの変化を阻止するとコカイン欲求行動が減少した。
doi: 10.1038/nn.2367
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