注目の論文
【植物科学】陸上でのコケの繁殖を助けた微生物の遺伝子
Nature Communications
2012年10月24日
Plant sciences: Microbes helped moss take over the land
原始的な植物群であるコケの一種、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)には、微生物から獲得した遺伝子があり、この遺伝子が、ヒメツリガネゴケの陸上生活への適応を促進した可能性があることを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
遺伝子の水平伝播とは、他の生物種からの遺伝子の直接獲得のことで、微生物に多く見られる一方、陸上植物にはまれにしか起こらないと考えられている。今回、J Huangたちは、塩基配列解読の行われたコケ種のヒメツリガネゴケのバイオインフォマティクス解析を行い、近縁度の高い藻類などの種ではなく、細菌、菌類又はウイルスの遺伝子に最も近縁なコケの遺伝子ファミリー57種を同定した。これらの遺伝子は、植物の代謝や成長に働くことが知られており、大いに注目されているのが光酸化ストレスに対する防御機能だ。Huangたちは、初期の植物が海中から出現したばかりのときに陸上での強い紫外線に悩まされたが、その後、微生物から有用な遺伝子を獲得することで繁栄したという仮説を立てている。
今回の研究では、陸上植物における遺伝子水平伝播が稀なことではなかったことが示唆されているが、この研究論文で報告された水平伝播が生じた過程、そして、胞子ではなく種子を産生する維管束植物が水平伝播を起こしにくかったのかどうかは解明されていない。
doi: 10.1038/ncomms2148
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