注目の論文

血中脂質値に影響する新たな遺伝要因

Nature Genetics

2008年12月8日

New inherited factors influencing blood lipid levels

心疾患のリスクを高める脂質レベルやその他の代謝的形質の個人差に寄与する遺伝子多型について報告する3つの論文が、Nature Genetics(電子版)に掲載される。今回の知見は、既知の遺伝子多型に新たな多型を加え、年齢、性別、体重といった従来の因子よりも優れた高脂質レベルの予測因子となる遺伝的リスクのプロファイルの作成に役立つ。

これまでコレステロール、トリグリセリドといった脂質のレベルに関するほとんどの全ゲノム関連解析(GWAS)では、特定の病気にかかっているという理由で集められた人々のデータが用いられていたが、こうした方法では偏りが生じるおそれがある。ウェルカムトラスト・サンガー研究所(英国ヒンクストン)のL Peltonenらは、16以上のヨーロッパ系の集団から無作為に抽出された被験者について全ゲノム関連解析を実施し、脂質レベルの個人差に寄与する22の遺伝子座を同定した。そのうちの6つは今回初めて同定された。

一方、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)のN Freimerらは、血中脂質値、血糖値、インスリン値、体重、血圧を含む9つの形質に関する全ゲノム関連解析を実施した。使用された試料には、フィンランド最北端の2つの地方で1966年に生まれた人々がほとんど網羅されていた。これは、初めての「出生コホート」での全ゲノム関連解析で、こうした関連解析には、年齢に関連する偏りや環境による偏りが避けられるという利点がある。Freimerらは、解析対象の形質に影響する23の遺伝子座を同定し、そのうちの9つは今回初めて同定された。

さらに、マサチューセッツ総合病院(米国ボストン)のS Kathiresanらは、コレステロール値、トリグリセリド値に関する全ゲノム関連解析を独自に実施し、これらの形質に寄与する30の遺伝子座を同定し、そのうちの11個は今回初めて同定された。

doi: 10.1038/ng.269

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